耐震偽装への税金投入批判、被害住民悩ます中傷も

耐震偽装問題で、強度不足マンションの解体・建て替えや住民への公的支援策が打ち出されるなか、国土交通省自治体に対し、「税金を投入するのはおかしい」といった意見が寄せられている。
 新潟県中越地震の被災者などに比べて支援が手厚すぎるといった指摘も目立つ。一方、インターネットの掲示板では被害者のマンション住民を中傷する書き込みが相次ぎ、「まわりの人に敵意を持たれているようで怖い」と訴える住民も出ている。
 国交省には16日までに、この問題についての意見が電話などで計約1300件寄せられた。マンションを自治体が買い取って解体、建て替え、住民に再分譲する枠組みが発表された6日以降は、反対意見が大部分になった。「住民の自己責任でやるべきだ」などの声が目立つという。
 「グランドステージ東向島」がある墨田区では、当初は家賃減免の方針を示さなかった区への非難が多かった。だが6日からは一転し、「責任を問うべきはヒューザーイーホームズ。税金を使ってほしくない」とする意見が大勢を占めるようになった。
 「グランドステージ住吉」を抱える江東区にも、「阪神大震災を経験したが、あの時は住宅再建に税金は使われなかった。不公平だ」などとする意見があった。横浜市でも公的資金投入に反対する投書やメールが11件寄せられている。これを受け同市は16日、支援には市ではなく国の予算を使うよう求める要望書を国交省に提出した。
 中越地震などの際の支援との違いばかりでなく、買い取りの対象が耐震強度0.5で線引きされたことなども不公平感につながっているようだ。
 当の住民からは「自分が当事者でなかったら、手厚い支援はおかしいと思うから仕方がない」(「東向島」の女性)というあきらめのような声も。「住吉」の男性は「『私たちは被害者だ』と主張するだけでは本当の解決にならない。当然、我々もリスクを負うべきだと思う」と、批判を冷静に受け止めている。
 こうした批判とは別に、住民たちを悩ませているのは一部のインターネット掲示板だ。住民の発言を「気にくわない」などとやり玉に挙げる心ない書き込みが多い。あるマンション住民は別の住民から、「ネットの掲示板に悪く書かれるので、マスコミに過激なことは言わないで」と頼み込まれたこともあったという。
 マンションの住民代表は「最初は倒壊の恐怖や生活の変化によるストレスが大きかった。ところが、最近では公的支援への批判が高まっていることで、『周囲の人たちに敵意を持たれている』と外出を怖がる人が増えてきた」と、心理的圧迫の深刻さを明かす。
(読売新聞) - 12月18日

 鈴木謙介氏が言うところの、イラク人質バッシング → 拉致被害者バッシング と続く被害者バッシングの系譜ですか?
 世の中には昔から、被害者意識を丸出しにする人に対して嫌悪する空気というのはありました。
 しかし、これらが顕在化するよになったのはネット社会の功罪でしょうか。マスコミというのもは弱者を叩かないという紳士協定の中にある*1が、ネット世論は無関係なのである。剥き出しのホンネ世論が露呈するのがネットです。
 困ったことは、本音では違和感を持っても被害者を叩くことに良心の呵責のある人間が、剥き出しのホンネ世論の前に、良心の呵責から開放されてしまうことであります。

*1:もっともイラク人質バッシングをしていたマスコミもあるが、拉致被害者家族バッシングをしたマスコミは皆無であった。