愛国者は信用できるか−鈴木邦男−

愛国者は信用できるか (講談社現代新書)
 非常にいい書物だ。40年以上右翼をやってきた人物だけに重みがある。
 ネットに巣食う嫌中厨、嫌韓厨、むやみに敵地攻撃を叫ぶ連中が軽薄なのは言わずもがなだが、国民への愛国心の強要に躍起になる小役人。過激な見出しを並べれば雑誌が売れると薄っぺらな暴論を並び立てる保守雑誌の編集者。すべてが下らなく見える。
 元と言えば、愛国心をタブー化してしまった左翼が悪いのかも知れないが、今の日本で語られる愛国心は余りにも熟成していない。醜い愛国心が暴走している点では、日本も中国や韓国と大差ない状況である。彼のような人物が愛国心を語る意味は非常に大きい。
 ただ識者であっても、愛国心というものを語れないのが現状なのであろう。保守派知識人の多くも、自説が軽薄なネットウヨ連中に読まれているのを喜んでいる程度の体たらくで、真の保守主義を次世代に伝えようという意欲もなければ、間違った愛国心が暴走していることへの危機感がない人が多い。
 彼の言うように、もう一度「家族愛」や「郷土愛」といった手の届くところから再構築していくのがこの国には大事なのではないか。小学校ではそういうことをまず教えたほうがいいと思う。