マル激トーク・オン・ディマンド いじめを無くすためにまず私たちがすべきこと 内藤朝雄氏(社会学者・明治大学助教授)

 時間がなかったので、今頃やっと視聴。
 いじめ問題に関しては内藤氏の研究には注目していて、著作「いじめの社会理論」は購入したが未読。とりあえずビデオ放送を先に見る。
 http://www.videonews.com/asx/marugeki_backnumber_pre/marugeki293_pre.asx

現在のいじめ問題について

    • いじめは時代的、地域的に普遍的に起こるもの。逃げ場のない狭い環境に囲われている条件では起こりうるもの。
    • 日本だけの特殊な現象ではない。ただ日本の学校の異常なまでの共同体主義*1がいじめの温床となっている。

いじめを解決するには

    • 暴力的ないじめに対しては警察を導入。学校を聖域化するのを止め、一般の市民社会と同じルールを適用。
    • 多元性の確保。子どもの社会を学校だけに依存させない。部活動を学校から開放し、地域コミュニティが担う等。
    • 将来的には学級制度を解体すべき。

マスコミのいじめ報道

    • 一種の祭り。鹿川君、大河内君とかつてもいじめ自殺が問題になる度にマスコミがお祭りをするが、ほとぼりが冷めると報道もされず関心も薄れる。
    • 自殺者が「ご神体」となる。センチメンタルな報道。
    • テレビのコメンテーターの人選がひど過ぎ。いじめ問題をこころの問題にすり替え、視聴者もそれを鵜呑み。 

学校の聖域化

    • 歴史的には明治維新後、田吾作を日本国民化するに当り、教師−生徒の関係を親子関係のように理想化。学校に対して過剰な役割を期待し理想化。
    • 戦後はその目的が失われても惰性が続く。
    • 右の全体主義者と左の全体主義者が、ともに共同体主義的な学校制度維持に加担。
    • 全体主義でない思想が日本に育たなかった。

日本のいじめの特徴

    • 学年別いじめの発生件数が中1でピークになる。欧米では小5あたりがピーク。
    • アングロサクソンは幼少時に厳しいしつけをし、思春期後に大人の市民社会的ルールを教えるのに対し、日本は武家社会の教育の影響で、幼少時は母親の下甘やかされ、元服後いきなり厳しい世界に入れられる。中学校でいきなり先輩後輩の上下関係や厳しい校則などを目の当たりにする。
    • 中3になっていじめが急激に減るのは受験勉強の影響。個人が個人の目標を追及するという環境下ではいじめは起こりにくい。



 ざっとこのような内容であった。
 一部議論の余地が残る部分はあるが、「いじめの原因はモラルの低下だ」というマジョリティーの意見より遥かに理知な意見であると思う。
 宮台真司氏も指摘していたが、いじめを物理的に排除できるが、その後別な問題は起きないかという指摘である。すでに「喧嘩はよくない」ということで子どもであっても殴り合いは許されなくなっているが、困難を経ないで成長した場合に、免疫のないまま大人になって大人の世界でやっていけるのかという点が議論の余地であろう。
 大人の世界のいじめ、特にパワーハラスメント等は子どもの世界のいじめと少し異質である。その辺は内藤氏もまだ思考中のようである。


内藤氏は「バカな左翼」に呆れた連中が大勢いるが、受皿がなかったのでそいつらが「バカな右翼」の方にいってしまった。教育問題は「バカな左翼」も「バカな右翼」も排除しないと解決しない。私は激しく同意したが、日本人の全体主義好きば病的なので、その受け皿が受け入れられるのかは未知数だと思う。

参考 内藤氏のブログ

http://d.hatena.ne.jp/suuuuhi/20061124

*1:共同体主義の学校制度を採る国と教習所型を取る国がある。