「おててつないで仲良くゴール」にみる90年代のネオリベと民族派の蜜月が終わり、無産右派が胎動する可能性

 「おててつないで仲良くゴール」の話をご存知であろうか、実にくだらない話ではあるのだが、実に象徴的な話である。小学校の運動会の徒競走で順位をつけるのを止め、最後は仲良く手をつないでゴールするという話だ。実は今になってどこの小学校で行われていたのか全く情報もなく、「自分の小学校はそうだった」という体験談も聞かない一種の都市伝説であったとも言われているのだが、90年代は保守派の日教組攻撃、サヨク批判のネタとして頻繁に聞かれたネタだ。未だにこのネタを使っているブロガーもいるぐらいだ。このネタを知りたい人は↓のエントリーを読んで欲しい。
http://d.hatena.ne.jp/debyu-bo/20060928/1159407413
http://d.hatena.ne.jp/opemu/20060929/1159524762
 90年代前半はネオリベが新鮮な輝きを持っていた時代で、「悪平等」「自己責任」等の言葉が飛び交い、保守派と呼ばれる人たちがこぞってネオリベに傾斜し、保守論壇ネオリベ一色になった。ソ連の崩壊から間もなかったことから「平等」という価値観を攻撃するのは好都合な時期でもあった。
 そもそも政府は小さい方がいいということ自体が伝統であるアメリカで保守派がネオリベラリズムを標榜するのは自然なことであったのだが、日本の民族派の人々にも日本の伝統的価値観と共通価値観がどこにあるのかよく解らないネオリベをなぜかすんなり受け入れられていった。保守という立場を標榜する以上は、高額所得者や企業優位の政治を是認するのが当然で、低額所得者や弱者に優しい態度はサヨク的だと保守の間では蔑まれた。
 どうもおかしいぞという空気が生まれてきたのが小泉政権末期であろうか。ネオリベ的政治の中で生まれた成功者、ホリエモン村上世彰が余りにも下品で、むしろ日本の伝統を破壊する存在であると、特に古い保守派の人が思うようになってきた。それでも若い右派の間ではネオリベ支持が続いていた。
 最近は更に風向きが変わった感じがする。安倍政権の企業優位、高額所得者優位の政策に対し、普段タカ派的発言や特ア批判をしているブロガーの多くが反発している*1のである。さすがに自ら不利になる政策を賛美する義理はないのであろう。「若い保守は依然としてネオリベ支持」という構造ではどうもなさそうだ。
 10年経って、ようやく反平等が保守のセオリーであるような変な呪縛から開放されてきたようだが、日本にもそろそろ無産右派*2が勢力を持つ可能性が出てきた。欧州では移民労働者受入問題から、労働者の方が排他的。国粋的になり、むしろ高額所得者の方がリベラルという傾向を見せている。北欧などでは高福祉と移民排斥という政策が同居した北欧型右翼政党というのが勢力を増しつつある。日本でも低所得者重視と民族主義が同居したイデオロギーが右傾化した若者や急激な負担増に苦しむ高齢者を中心に受け入れられる余地がある。ただこのイデオロギー国家社会主義に通じる危険思想に転じる可能性があり、要注意である。
 無産右派の危険性については、また次の機会に。

*1:対中外交問題ネットウヨの間で反財界感受が高まっていたという土壌もある。

*2:日本には戦前は存在した。その一部は戦後民社党右派として生き残り、西村眞悟などはその系譜である。