日本に労働者や貧困層の支持を集める右翼政治家が出現する予感(悪夢か?)

 論座小林よしのり「わしが格差拡大に反対するワケ」を読んだ。この人は、保守と言えばアメリカ寄りの立場を、勤労者より経済界の立場を取るものが当たり前という保守を思考停止状態から開放するのに大きな役割を果たしたことでは一目を置いている。90年代以降、保守主義が多様性を持つことにより保守主義が分離的拡散を果たすことができたとも言える。
 特に保守が弱者の立場に立つというのは大きな意味を持つ。フランスのサルコジ大統領のように貧しい階層出身の保守政治家が出現し、労働者が保守政治家を支持するようになると、もう左翼は壊滅打撃を受けてしまう。
 日本は安倍政権があいにく経団連ベッタリのネオリベ丸出し路線を邁進しているお陰で、国民の格差問題に対する不満や不安が鬱積し、死に体の左翼が生き返るチャンスが生じているくらいである。ただ小林よしのりのように格差拡大を保守が問題視した瞬間、左翼の生き残る余地はほぼなくなってしまう可能性がある。
 もっとも労働者側&ナショナリズムの組み合わせを「右派」とするのは欧米的な発想*1であり、アジアやアフリカでは労働者側&ナショナリズムの組み合わせを「左派」と呼ぶことが多い。植民地支配を経験した国では左翼運動と民族運動が密接に絡みついているからである。韓国のサヨクが非常に民族主義的であることを例にすれば解りやすいであろう。
 日本でも戦中は社会主義の影響を受けているか、或いは労働者や農民の立場に立つ勢力を左派と呼んだ。戦後もその傾向は変わらず、大東亜戦争に協力的であったか否か、大政翼賛会に参加したか否かに関係なく、資本主義を堅持する立場の政治家が保守政党を結成し、社会主義の影響を受けているか、或いは労働者や農民の立場に立つ勢力が社会党終結したのである。保守政党にも結構翼賛政治反対派の人もいて、少し前に反翼賛の立場を取り戦後保守政党結成に参加した人を自民党の機関紙で、「気骨ある政治家たち-翼賛体制に立ち向かった37人」と題されて連載されていた。この中には安倍総理の父方の祖父である安倍寛ゲッペルス世耕の祖父の世耕弘一芦田均鳩山一郎三木武夫大野伴睦等がいる。一方、社会党にも体制翼賛会に参加していた人も少なくなく、国会でヒットラー賛美演説を行った西尾末広安部磯雄片山哲などがそうである。これらの勢力は最終的には民社党を結成。この労働右派という立場は戦前から今の民主党右派までつながっている。西村眞悟はこの系譜の政治家だ。
 社会主義の亡霊が消えた現在では、歴史観や安全保障感で「右派」「左派」を分ける傾向が強いが、昭和30年代までは戦前肯定的であても再軍備派であっても、労働者側の立場に立脚していれば「左派」と呼ばれていたのである。
 ヨーロッパでは労働者や貧困層が右派政党を支持するのが当たり前の光景になってしまった。日本でもやがて労働者や貧困層の支持を集める保守政治家が出現する予感(8割悪夢で2割は期待)がしたのは私だけであろうか。それもおぼっちゃまで財界ベッタリの安倍総理が失脚した後に登場するような。
 このタイプの政治家は安倍晋三よりマシなのか更に酷いのか、それは私にもわからない。

*1:ナチスがまさにこの組み合わせであた。