自民党とネット右翼はもはや言葉が通じない−毒ギョウザ問題にみる−

安倍政権崩壊以降、すっかり元気のなかったネット右翼たちが元気だ。待ってましたと言わんばかりの中国の毒ギョウザ事件が起きたからだ。
 同時に、小泉-安倍政権を通じて、政権に寄り添っていたネット右翼と政権との距離が、確実に乖離していることも痛感した。
 ネット右翼の間では、今回の件で「なぜ政府は中国産食品輸入禁止に踏み切らないのか」という批判が強い。福田政権がこの問題において慎重な対応に終始しているからである。

1/31産経
「中国産だから、ことごとくすべてだめだと言い切るのはいかがなものでしょうか」


 この問題を理解する前提として、中国経済の基礎知識を共有せねばならない。中国は13億という人口を背景に巨大な国内市場を抱え、製造業が血眼になって輸出に活路を見出そうという姿勢はない。農業に至ってはまもなく輸入国に転じようとしている。かつての日本のように、外国が望む製品を一所懸命作るような必要がないのである。
 ではなぜ中国産食品が日本に大量に輸出されているかと言えば、コストに安い食品で日本の市場を凌駕するのが日本の商社のビジネスモデルだからである。日本の商社はコストの安い中国産食品の供給ルートを血眼になって開拓しているのである。
 今回の件でダメージを受けるのは完全に日本の商社であり、中国のダメージは大したものではない。中国のメーカーは日本が買ってくれなくても、巨大な中国市場の中で代替販路など容易に探すことができるからである。中国人はまだ食の安全に対する意識が相当低いので、多少問題のあるものでも販売可能である。食の安全にうるさい日本市場に対応するためにコストをかけるくらいなら、日本など相手にせず、ラクな中国国内向けビジネスに特化しようというメーカーがあってもおかしくない。
 この前提を熟知している自民党の先生と知らないネット右翼の間に「バカの壁」が立ちはかり、お互いにコミュニケーション不可能なところまで意識が乖離しているのである。対中問題に関しては、この「バカの壁」が顕著に立ちはだかる。
 ネット右翼はなぜ「保守」のはずの自民党の先生が中国詣に余念がないのかが理解できない。自民党の先生の多くが考える「国益」とは「自国企業が国際社会で利益を確保する。」ことであり、今日的には日本企業が中国において金儲けができることが非常に重要なのである。日本の商社による中国製食品の輸入は、その典型なのである。