後期高齢者医療制度の狙い

 後期高齢者医療制度の狙いが明らかになった。
厚生労働省高齢者医療企画室長補佐の土佐和男氏は『死期の近づいたお年寄りの医療費が非常に高額として終末期医療を「抑制する仕組み」が重要』と述べている。まさにこれがこの制度の主眼である。

参考 4/24毎日

 最近、高齢者に厳しい政策が相次いで出される。これは保守政治の矛盾と崩壊という混乱の中で生まれた現象と私は見ている。日本では80年代後半からアングロサクソン的な新自由主義の強い影響を受け、日本の保守風土の中に何気ない顔をして紛れ込んだ。いつのまにか保守的な人は自己責任原則がまるで日本古来の伝統的価値観であるかの如く無批判に受け入れ、弱者に厳しい政策はサヨクへのアンチテーゼとして保守が是とすべき思想であるかの如く広く浸透していった。
 この矛盾が明らかになるのは小泉政権末期であった。少しずつ新自由主義が日本の伝統的価値間と異質の外来保守思想であることが理解され、特に年配の保守層に違和感が広がっていった。弱者に厳しい政策や、その結果としての格差拡大は、日本の伝統的コミュニティーを崩壊させるという認識も拡がった。
 その矛盾の中で崩壊したのが安倍政権である。小泉的新自由主義の継承と、伝統的保守への回帰という離反した期待から驚異的な支持率でスタートしながら、両取りできないばかりか相互から不信を買い信用を失って崩壊したのである。
 ただ、小泉政権を熱心に支持した若い保守層は、基本的に考え方を変えたわけではない。安倍政権や福田政権を「改革後退」と批判している人は多い。もうすぐ死にそうな老人や、もうすぐ仲間入りする団塊の世代を「既得権益者」と焚き付けて、若者たちの「こうつらのために思い負担を負わされている」という意識付けを行う工作は不可能ではない。
 というか、明らかに厚生官僚は工作をしようとしているのである。高齢者と現役世代の分断工作を行い、敵意を喚起して政策への支持を掻き立てるという小泉的手法を考えているのであろう。

  • 高齢者医療の保険料負担、給与明細に明記・現役世代に一目で 4/24日経

 官僚自体も新自由主義にどっぷり漬かって、日本を自己責任国家にしたいのであろう。
 ただ若者は官僚が思っているほど、バカでもないし、そんなに冷たいわけではない。中には官僚主導のプロパガンダにまんまとはまって、老人を既得権者として敵視する若者が出てもおかしくはないが、そんな人間ばかりじゃない。みんな自分のおじいちゃんおばあちゃんを大切に思っているし、日本の伝統的思想の影響を受けて、お年寄りは大事にしなければいけないと思っている。そんな官僚のプロパガンダが浸透するとは思えない。
 そもそも官僚にこんな好き勝手なことをやらせていいのか?政権与党はいったい何をしているのであろうか?教育問題で、あれだけ国を愛するだの人間力だの騒いでいた政治家の先生方は、こういう年寄を粗末にする思想や世代間憎悪を喚起するような政治手法には立腹しないのかね?