国民の8割が支持する「脱原発」の脆弱性

このまま原発を再稼動させなければ、日本は最速で脱原発が実現したはず

 日本ではよくドイツの脱原発への決断が賞賛されるが、ドイツでさえ2020年までに段階的に原子力発電所を廃止し、脱原発を実現するスケジュールだ。
 もし日本が、現在運転を停止している原発をこのまま再稼動させず、このまま脱原発を宣言したら、驚異的なスピードでの脱原発になる。
 一つ疑問なのは、脱原発を支持する国民の中で、どれくらいの人がこのベストシナリオを期待していたかという点である。「いくらなんでもそれは出来過ぎ」という気持ちが脱原発派の中にもあったような気がしてならない。
 例えば、美浜原発を始め、各地の原発で安全性を高めるための設備投資が検討され、逐次報道されているが、それについて批判する人はあまり居ない。このまま原発を再稼動させなければ、原発への設備投資はすべて無駄になるのにである。
その一方で、大飯原発の再稼動への批判は凄まじい。このギャップはいったい何なのだ?

妥協的な脱原発派、強硬な原発推進

 どうも、今ある原発は徹底的に安全性を確保した上で再稼動し、段階的に脱原発は進めば御の字くらいに考えている人が多いのではという仮定が成り立つ。大飯原発の再稼動を批判しているのは、このまま原発を稼動させないで脱原発を完成させることを期待していたのではなく、単に安全対策が不十分であるからという理由で批判している人が多いのではないか?朝日・毎日などのメディアも「脱原発」の立場を標榜しているが、よく見るとこの立場だ。
 ところが、脱原発派は、原発推進派は原子力を未来永劫日本の基幹エネルギーにしなければ許さないという強硬路線を取っているのである。そのいい例が福井県知事の発言である。福井県知事は、「再稼動を要請しながら将来は脱原発」と言う枝野経済産業相を強く批判している。

脱原発派=弱い多数派

 今、国民世論の8割が脱原発と言われている。しかし広い支持を得ているが故に、現実を重視し臨機応変な政策を期待する中間層を取り込んでしまった。それが故の弱さを今月原発派は抱えてしまった。
 ただ強硬派が突っ走ればいいという問題でもない。この「弱い多数派」が原発推進勢力に切り崩されないように維持し、かつ少数派だが妥協を許さない強い原発推進勢力と対峙しながら、脱原発の旗が萎えないように維持するのは結構難しい問題である。