民主党は国民との約束を守らなかったが、自民党は国民との約束を守れるのか?

民主党はなぜマニフェストの多くを実現できずに反故にしたのか?

 民主党マニフェストの多くを実現できずに反故にしたのは以下の理由が考えられる。
1.甘い見通しのまま、できる可能性が低い約束をしてした。
2.党内に公約に納得していない議員がいて、後から修正するチャンスをうかがっている。
3.マスコミや圧力団体が「公党の国民への約束」を重要視せず、公約を変更するよう圧力をかけた。
 マスコミ報道や民主党の自己反省では1の理由が強調されるが、これだけを強調するのは余り意味がない。
 まず野田総理以下、今の民主党執行部がどこまでマニフェストを是としているかまず疑わしい。正直、当時は小沢氏の息のかかった議員の影響力が強く、その当時の議論であまり支持したくない政策を押し切られ、これから党内基盤が替わってきたら巻き返しを図ろうと考えていたのではないか?
 民主党の議員の多くが、マニフェストが地雷になり、こんなに手足を縛られるものであるというイマジネーションがなかったのであろう。党首や執行部が替われば変更はできるくらいに考えていたのではないいか。
 また民主党政権発足直後から、読売新聞を筆頭にマニフェストの修正を迫る論調を展開したのは記憶にあるだろう。そして消費税増税に関してはほとんどのマスコミが公約に書いていない増税民主党政権に迫った。マスコミ自身が「公党が国民に対して行った約束」を重要視していないのである。それは財界団体などの圧力団体も同じである
 マスコミが1の理由ばかり強調するのは3の理由を隠すため、民主党の自己反省で1の理由ばかり強調するのは2の理由を隠すためである。

自民党はできもしない約束はしないだろう。しかし…

 自民党は賢明な政党なので、民主党のようにできもしない約束はしないだろう。よって1が原因による公約撤回リスクは低いと言える。しかし、2、3の要因のリスクはかなりあると考える。
 私は横浜市の郊外に住んでいるが、そこの選挙区の自民党前職のビラには、はっきりTPP推進、公共事業の復活反対と書かれ、前回の選挙で都市部選出の自民党議員が大量落選し、地方選出議員の比率が高くなってしまったために党の体質が変わってしまったとの批判が書かれていた。自民党のTPP反対、国土強靭化はどこまでコンセンサスを得ているかわからないが、反対意見の議員もいて、選挙後に党内基盤がかわったら巻き返しを図ろうと考えている議員も必ずいるだろう。
 マスコミや財界も、自民党が政権を奪還した直後から公約の撤回を迫ってくる可能性が高い。先に言ったとおり、彼らは「公党が国民に対して行った約束」を重要視していないのである。まずTPPの推進と公共事業拡大の見直しを迫ってくるのは明らかだ。今後総選挙に向けて、安倍総裁が対中強硬外交を唱えるとなると、それも槍玉にされ、対中融和外交を進めるよう圧力をかけてくるだろう。
 民主党マニフェストの多くを実現できずに反故にしたのは、甘い見通しのまま、できる可能性が低い約束をしてしたからだという安易な総括が為された結果、自民党なら公約を守るだろうという空気が生まれているが、公約を守ることはそんな簡単なことではない。約束を守れなかった政党は選挙の洗礼を浴びても、「公党が国民に対して行った約束」などどうでもいいと思っている取り巻きは何の咎めもなく跋扈するのであるから。