猪瀬都知事の交通政策は過大評価され過ぎではないか?

私は猪瀬都知事に恨みはなく、やっていることを周囲が過大評価し過ぎるのがおかしいのであって、やってはならないことをやっている訳でもなく、批判する気もない。ただ周囲が過大評価する余り、周囲が意見しずらくなり、結果的に成果を得にくくなってはいないだろうか?

効果に乏しい九段下駅の壁撤去

 結論から言うと、やって悪くないがそんなに過剰評価できる代物ではない。
 半蔵門線の東行きと都営新宿線西行きの同一ホーム乗換が可能になったが、そもそも半蔵門線の東行きから都営新宿線西行きに乗り継ぐ人がいるか考えて欲しい。

 このようにメリットを享受できるパターンは限りなく少ない。まあバカの壁がなくなってホームが広くなったのは確かなのでその点は評価していいが、乗り換えが便利になった云々は明らかな過大評価で、現実を見ていない人が適当なことを言っているとしか思えない。

東京メトロとの経営統合に拘りすぎ

  確かに東京に東京メトロ都営地下鉄の2事業者が並存し、両者を乗り継ぐ場合運賃が割高になる弊害は計り知れない。しかしその弊害を除去する方法は経営統合しかないのか?この点についてマスコミも余りにも無知で、経営統合が是という話に安易に乗りすぎている。
 世界には複数の事業者が地下鉄を運営している都市は多数ある。代表的なのはフランスのパリ。ドイツのベルリン、ハンブルク、フランクフルト、ミュンヘン。アジアでは韓国のソウルがそうだ。複数の事業者が地下鉄を運営している東京は異例という猪瀬都知事の認識は誤りで、猪瀬都知事の誤った認識を検証せずそのまま垂れ流すマスコミも多い。ただこれらの都市は事業者が異なっていても同じ運賃制度が採用されていて、旅行者は複数事業者が存在することに気づかずに利用しているケースも多い。
 東京でも、東京メトロ都営地下鉄を存続させたまま運賃制度を統一することは可能である。運賃制度が統一されれば利用者の不満はほとんどなくなるだろう。確かに経営統合まで踏み込むことで、資材調達のボリュームが増えて調達メリットが生じたり、間接人員を減らせるメリットはあるが、猪瀬都知事自身の狙いが「利用者の利便性」なのか「統合によるコストダイン」なのかよくわからないまま「経営統合ありき」で前のめりになっていやしないか? いたずらにハードルを上げて、できる施策もできなくなるだけである。

東京メトロ都営地下鉄の運賃統合は可能か?

 仮に都営地下鉄東京メトロと同じ運賃制度を導入した場合、大幅な減収になるという問題に直面する。運賃統合による乗客増も想定できるが、増客増で減収をカバーするのは難しいだろう。JRの運賃制度を参考に、都営線の新橋〜西馬込、春日〜西高島平、日比谷〜三田、住吉〜本八幡中野坂上〜光が丘には東京メトロの2割増程度の通算距離を採用してはどうか。そうすれば都営だけ利用していた乗客の運賃は今までとあまり換わらず、都営とメトロを乗り継いでいた乗客に値下げを集中でき、減収はある程度圧縮できるのではないか。

都営バス24時間運転。渋谷〜六本木では確実に失敗する。

 この区間で24時間運転して誰が利用するのか、よく考えて欲しい。まず深夜帰宅する人が使うだろうか?渋谷〜六本木間に居住している人は相当な富裕層であり、帰宅が深夜になる場合でもタクシーを利用するであろう。また深夜時間帯は他の交通機関が動いていない中、渋谷〜六本木間だけバスが走っていても、この沿線に住んでいる人以外利用価値は低い。
六本木と渋谷は共に繁華街なので深夜に遊ぶ人達の回遊性も想定できるが、2〜3人集まればタクシーで移動するだろう。深夜バスの運賃は400円である。深夜に一人で飲み歩く人がそういるとも思えない
バスの終夜運転を実施している都市は多い。ロンドンやパリは地下鉄の終夜運転を行わない代わりにバスを終夜運転させている。両都市とも特徴的なのは、通常時間帯はバス路線が地下鉄を補完するように、地下鉄と重複しないよう設定されている一方、深夜は地下鉄の路線と重複するような路線を運行している点である。
もし東京で終夜バスを運転するならば、銀座線や丸の内線と並行する路線であろう。青山通りは深夜賑わいに乏しいので、六本木通りを経由させるのもいいが、少なくとも、渋谷〜六本木〜新橋〜銀座〜日本橋〜上野くらいの路線延長がないとタクシーでなくバスを選ぶインセンティブが働かないと思う。都心部に住宅が少ないという東京の特徴を考えると、銀座〜新橋〜六本木〜渋谷〜二子玉川、或いは渋谷〜六本木〜新橋〜銀座〜勝鬨豊洲といった路線の方がいいかも知れない。