国内世論のフラストレーション

 総理の靖国参拝慰安婦問題で、国際的に日本の立場が悪くなる一方、国内世論では優勢になりつつあるという現象が生まれ、そのギャップが高まれば高まるほど世論のフラストレーションが溜まる。

 国内保守派のフラストレーションを棚卸ししてみると、こんな感じだろうか。
保守派のフラストレーションの要因

  • 日本政府が有効なロビー活動を展開できず、外交で負け続けている。
  • 安倍政権は公式には慰安婦問題の政府見解は変えていないので、外務省のロビー活動はあくまでも、日本は戦後真摯に反省をしてきたという内容のもの。
  • 勇んだ発言をする政治家や有識者がいれば拍手喝采したいが、外交面では地雷原に丸腰で突っ込んで爆死するような惨状で、余計にいらいらする。
  • 安倍総理を支持しているので、政府は批判できない。
  • 米国には憤りを感じているが、共和党政権になれば米国のスタンスも変わるのではという希望を持っており、今すぐに反米にはなれない。
  • とりあえず一番弱い国内のサヨクを叩いてフラストレーションを紛らわすが、外交面での打開策が見えないのでイライラが収まらない。

 日本のロビー活動が後手に回っているのは、外交方針が不明確だからだ。安倍総理戦後レジームの見直しを掲げながら、具合的には何も行っていない。外務省は従来の外交方針に従って日本の立場を説明するしかない。外務省の従来の方針というのは、過去はしっかり謝って未来志向の関係を築くというものだが、その方針自体安倍総理やその支持者に良く思われていないので、あまり突っ込んだ活動ができないのだ。
 さりとて民間のロビー活動も盛り上がらず、たまにやっても幸福の科学のように勝算がないまま地雷原に突っ込むような活動で戦果は上がっていない。
 多くの保守派は、安倍政権が近々河野談話を見直し、「慰安婦は捏造だ」というロビー活動を展開してくれると思っているのか?よくわからない状態で、みなイライラして時間だけが過ぎているような気がしてならない。
 対する国内左派はどうなのか?実はこちらもイライラしている人が多いような気がする。それを棚卸しするとこんな感じだろうか。

左派のフラストレーション

  • 「国内左翼は中韓の手先」といったプロパガンダが効力を持ち、国内世論の支持を失っている。

(元々は右派を批判するために、中韓からの批判を持ち出したつもりが、逆に格好の批判材料に利用されて自滅した。)

  • 諸外国の意見は別として、かつては国内問題として靖国神社を批判する意見がかつては存在感を持っていたが、左派自体が原点を見失っている。
  • 外交面で保守派は自爆しているが、それによるフラストレーションの高まりが国内世論を更に右傾化させいて、国内世論においてはより劣勢になっている。
  • 米国の圧力を利用する手もあるが、その他の問題で批判することの多い米国を利用するのは気が引けるし、利用しても右派からダブスタだと批判されるだけ。
  • 安倍総理の右傾化を懸念する穏健保守派と連携する手もあるが、左派に理解のある保守派との連携は民主党政権で懲り懲り。はっきり左派色を鮮明にする人しか信用しないと言う空気は左派内にある。

 という感じで、国内世論はオールアンハッピーで、フラストレーションが溜まっている状況だ。
 もっとも国内世論のフラストレーション等諸外国は考慮してくれない。ギリシャ債務危機の際、ギリシャ国内世論のフラストレーションが溜まって暴発寸前であっても、ドイツを初め諸外国は決して圧力を弱めなかった。
 諸外国なんてのはそんなもんだ。あくまでもその国の為政者に国民世論を適当にあしらうスキルを求め、そのスキルの高さが政治家の国際的評価になる。
 日本にそのようなスキルのある政治家は見当たらず、当面は国民世論のイライラは続くのではないか。