選挙情勢 ポイント整理

    • 野党ともに前回より優位になる点、不利になる点がある。
  • ただ野党が有利になる点は効果が見えないものが多く、蓋を開けてみないとわからない。
  • 与党が不利になる点もいくつかあるが、あまり大きなものではない。
  • それを考慮すると、現段階では与党有利の状況と言わざるを得ない。
与党 野党
有利な点 (1)自民党政党支持率が高い
(2)第1次安倍政権時代の安倍総理に対する負のイメージが払拭されている。
(3)当面自民党政権が続くとの認識が強まり、組織票が集まりやすい
(4)新人議員比率が低く、知名度不足リスクがない
(5)野党間の選挙協力が進む
(6)バッファープレイヤー的投票が期待できる
(7)前回落選議員への同情票(次点バネ)が期待できる
(8)お灸的投票行動がなくなる。(民主党
不利な点 (9)落選中議員への同情票(次点バネ)がなくなる
(10)前回自民党の勝ち過ぎにより影響力を失った公明党が、今回は自民党の支援に力を入れない可能性
(11)解散の意義が支持者に理解されていない。またこの時期の解散を快く思わない支持者が多く、選挙に力が入らない
(12)共産党を除き前回より政党支持率が低い
(13)候補者擁立、選挙準備の遅れ
(14)党首の発信力が弱体化。(特に民主党:野田→海江田)
(15)反自民票が共産党に集まる
(16)自民党政権が当面続くのが確実な中で、リスクを冒して野党候補を支持する団体が減る
    • 補足

**与党の優位点
(3)以前なら郵政団体や農協、医師会が自民党に反旗を翻すことがあったが、自民党政権が当面続くことが確実な状況では、怖くてそのようなリスクを冒す団体はなかなか現れない。自民党の政策に不満がある団体であっても自民党に平伏すしかない。
(4)今回の選挙で新人議員の比率が低く、いても二世議員等で知名度不足のリスクがない。前回初当選の議員は、2年間の議員活動である程度名前を浸透させることができている。もちろん盤石ではないだろうが。
**野党が優位な点
(5)前回に比べて非自民政党の競合は大幅に減るだろうが、そもそも各党の支持率が下がっている…⑫、支持率の高い共産党反自民票が流れる…⑮というマイナスを帳消しにしてお釣りが出るかは不明。
(6)90年代までは、基本的には自民党政権を望んでいるが、自民党が勝ち過ぎることを望まないバッファープレイヤーという有権者層が存在し、社会党政権は望まないが社会党に投票するような有権者は多かった。ただそのような政治風土は政権交代可能な二大政党制への期待と引き換えに絶えており、二大政党制への期待が潰えたからと言って復活するとは限らない。
今回は安倍政権の信任投票で、与党を圧勝させるか辛勝させるかが焦点であるにもかかわらず、ガチに「民主党には政権担当能力がないから」という理由で自民党に投票する有権者も多い可能性もあり、あまり期待できないかも知れない。
(7)次点バネはある程度当選回数があって、選挙区で有権者の信が厚い候補者でないと効かないと言われている。前回の選挙では、09年の選挙で地元の自民党候補が落選し比例復活もできないケースが多々あり、地元の人が非常にショックを受けたケースが多かった。前回自民党はそれほど支持率が高くなかったのに圧勝したのは、地元の先生の議席を何とか回復させようという次点バネの総結集の賜物という分析もある。
民主党のように前回落選した議員の多くが引退した状況では、そもそもバネが起きる選挙区は限られてくる。「大事な先生を落してしまった」と悔やまれているケースがどれだけあるか?
(8)前回の選挙では、民主党を支持してきたけど、今回だけは入れないというような「お灸票」が見られ民主党は大敗した。しかし下野後に民主党の支持率はさらに下がっていることから、これらの有権者がそのまま支持者を辞めて無党派層に転じた可能性が高い。そういう有権者を短期間で支持者に復帰させられないまでも「無党派層ではあるが、自民党には入れたくないので、鼻を摘まんで民主党に入れるか」というところまで持っていけるかが鍵。
**与党が不利な点
(10)前回の選挙ではかなり早い段階から自民党圧勝の予想が出て、公明党が支援調整に動くのではという予想をしたが、出口調査を見る限り公明党支持者は押し並べて自民党候補に投票していた。もちろん出口調査は嘘をついている可能性もあるが、選挙結果を見る限り公明党が支援調整に動いた形跡はない。自民党議席が増えれば増えるほど公明党の発言力は低下すると思われるが、公明党の支援調整は今回ないと思った方がいいと思う。
(13)マスコミはこれを一番指摘するが、そもそも野党の候補者擁立が遅れている選挙区=勝算の低い選挙区であり、そのような選挙区での候補者擁立に体力を使うくらいなら、勝てる選挙区に体力を使った方がいい。この現象自体は獲得議席数の増減を占う意味においてはさして重要ではない。