右傾化する非エリート

 非エリート層が右傾化するのは世界的傾向だ。そのロジックは一つは移民問題。より安い賃金で働く移民が流入し、彼らの職場を奪うため、移民排斥運動が起きる。もう一つは反グローバリズムグローバリズムというかグローバル・スタンダードアメリカ化が国内の構造改革を促し、下層階級の生活をより苦しくする。反アメリカ→国粋化となるカラクリである。
 日本は従来労働組合等の左翼セクトが非エリートの受け皿であった。日本の労働運動は世界でも類を見ないエリート層/非エリート層或いはホワイトカラー/ブルーカラーの格差縮小を実現させ、労使協調で高度経済成長を実現させた功績は認められる。しかし、一度縮小させた格差が再拡大していることに対し労働組合は無力で、指を咥えて黙認するしかなく、求心力を失っている。
 そして日本もおしなべて非エリート層の右傾化傾向は見られるのだが、海外の傾向とは少し異なる。外国人労働者は基本的には受け入れてないし、世界潮流である「反米愛国主義」の勃興こそ見られるものの言動の中心は反中・反韓であるため、海外の事例とは異質である。
 どちらかというと、自分たちの生活に直結した問題として右傾化するのでなく、憂さ晴らしとしての右傾化の粋を出ていないというのが私の率直な感想である。かつての左翼思想がそれなりに労働者の生活改善を実現させたのに比べ、右翼思想は現実に労働者の生活を改善する処方箋にはなっていない。それなのに右翼思想に傾斜する者が多いのはなぜか?
 昨日のエントリーの続きになるが、女性に代わる低賃金労働に就く若い男性が反ジェンダーフリー思想に傾斜しているのも一因ではないか?もちろん、反ジェンダーフリーを唱えたところで生活が良くなる訳ではなく、ガス抜きに過ぎないのではあるが……。
 かつて職場では無条件で男性が偉かった訳だが、今は能力のある女性は上に立ち、非エリートの男性はそれに従属するのである。これに納得できない男性が多数いるのも事実で、そんなモヤモヤを密かに汲み取ったのが「踊る大捜査線」である。
 また最近活躍する右翼ブロガーに川西正彦氏という人物がいるが、彼の露骨なまでの反女権が一部で支持されているのもそんな空気の顕れかも知れない。