保守主義とは何か 個人を吸収する共同体 広井良典千葉大教授

 保守主義の特徴は自由主義社民主義と対比するとわかりやすい。独立した個人が自由に競争すればいいという自由主義にブレーキをかける意味では保守主義社民主義は似ている。保守主義は個人を共同体の方に吸収してゆく方向。社民主義は個人をベースに自由主義で失われた共同体を公共性によって回復しようとする。

 保守主義は本来ムラ社会で完結するのが本来の姿で、本来は国家の介入を嫌う。ただムラの共同体が同心円を広げて国全体が一つになるという保守主義的な国家感というものがあり、日本もこれに当てはまる。地域や会社といった共同体が崩れ、個人が独立できないまま孤立し、繋がりを求める個人を国家が吸収する傾向が強まっている。

 保守主義は家族や共同体の中の相互扶助が基本だから、国家による社会保障はできるだけ小さいほうがいい。自民党政調会長時代の亀井静香介護保険制度に関し「子が親を介護する美風を損なう制度は問題がある」と疑義を呈したことが象徴的だ。
 これに対して自由主義は自助がベース、社民主義は手厚い社会保障が特徴だ。

  • 小泉と安倍

 小泉政治保守主義から自由主義への流れであった。安倍政権は市場化でばらばらになった個人のつながりを回復させようとしている。ただ日本が一つの共同体であった時代はいいが、複数の共同体と個人が乱立する現在の日本の状況で利害を調整するのは難しい。

 11/23の朝日新聞からの引用。広井良典氏自身は「持続可能な福祉社会」という著作からわかる通り、一度問題のある制度とレッテルを貼られて葬り去られようとしている社民主義の再興を考えている御仁のようである。保守主義自由主義が混雑しやすい現況で比較的わかりやすい説明であったのでメモした。
 国家感の面では保守主義的現象が今の日本で顕著になるのはよくわかるが、保守主義的な社会保障感はどう考えても現代社会では現実的ではない。保守主義はこの面では自由主義の制度感を借用せざるを得ないのであろう。