特急「利尻」の指定席は80%程の乗車率であったが、徐々に降車してゆき、旭川ではかなりの乗客が下車し、乗車率は30%程になった。この列車は宗谷方面への夜行列車という性格以上に旭川行きの最終特急という性格が強いのだと実感。今日は土曜日だが、平日はこの傾向がより顕著になるのではと予想できる。
 私は席を移動、前の席を回転させて足を乗せ、睡眠体制に入った。ちょうど「不過視的なものの時代」も読み終えた頃だ。
 
 途中、鹿との衝突で列車が大きく揺れて起こされた以外は、熟睡したまま午前6時ちょうど稚内駅に到着。すぐにノシャップ岬に行くつもりだったが、稚内温泉に行く途中で通るのがわかり、とりあえず駅そばを食べる。「利尻」で到着した人や稚内駅発の始発列車に乗る人などでけっこう繁盛。味の方もばかにできないものがあった。
 とりあえず宗谷岬行きのバスまで時間があるので、利尻島礼文島方面のフェリーが発着する港まで散策。この岸壁はかつて稚泊連絡線が発着したらしいが、面影はない。
 宗谷岬までは稚内駅から40km近く離れており、バスで1時間近くかかる。バス代も往復で3000円近く破格だ。しかし途中信号のない1本道は快適で距離を感じさせない。渡辺美里のアルバムがちょうど終わった頃に目的地に着いた。
 宗谷岬のバス停で下りたのは男5人。いずれも地元の人間ではなく、1人旅でヲタク風。恐らく彼らも「利尻」の乗客であったに違いない。こういう場所に来るのは人種が特定されているのか?宗谷岬は特に見るべきものはない、ただサハリンが肉眼で見えるということを知りだけで意味がある場所だ。
 稚内駅に戻り、そこから少し離れた稚内駅通りという停留所まで歩いてノシャップ行きの市内線バスに乗り換えた。嫌なことに私と全く同じ工程の人が1人……。ノシャップ岬は利尻富士が見える以外は見るべきものがない。同じ利尻岳を見るなら、宗谷岬から駅に戻る途中、稚内湾の向こうにノシャップ半島越しに見えた利尻富士の方が雄大だ。ノシャップから稚内温泉まで行くバスまで時間があるので、岬にある水族館に入るが、ここはいただけない。ゴマアザラシやペンギンはかわいいので許すが、館内の水槽には熱帯魚やら南洋の魚やらが泳いでいる。日本最北の水族館を標榜するなら、北洋の魚に統一すべきではないか?
 ノシャップのバス停に戻ったら、先ほどの客が先に待っていた、しかも稚内方面ではなく、稚内温泉方面のバス停に。とうとう稚内温泉まで工程が同じとは。稚内温泉では利尻富士を見ながら、疲れを癒す。新興の立ち寄り温泉ながら、なかなかいい湯加減だ。日曜日もかかわらず、観光客より地元の人の姿が目立った。
 温泉から駅に戻るのは、先ほどのルートを戻るのが一般的だが、先ほどの客とまた同じ工程は嫌なので、坂ノ下経由で南稚内駅に向かうことにした。バスには湯上りのお年寄りばかり、稚内市には敬老パスみたいのがあるらしく、この温泉は地元の年寄りのコミュニティーになっているようだ。
 南稚内から特急サロベツで帰路に着く。途中、天塩中川の手前辺りで、鹿が横断したとまた急停車。そんなに鹿が多いのか宗谷本線沿線は?名寄駅辺りから暗くなってきたので、車窓を眺めるのをやめ、読書をはじめる。「自由を考える」を読みはじめた。