生活安全主義

 日本人の政治的志向のマジョリティーとして「生活安全主義」という言葉を提示したい。さしずめ小学生ぐらいの子供を持つお母さんの平均的意見だと考えていただきたい。
 基本的には生活上の安全を最重視し、食品の安全、環境保護治安対策、交通対策を求める。税制や社会保障の面では将来的な保障を重視、大局的には紛争のない世界を理想とする。
 この辺をフィットした政策を出した政党は確実に躍進できるのだが……。
 そもそも中曽根政権下の1986年の総選挙が争点が乏しいまま、なんとなく自民党が300議席に迫る大勝した時、多くの政治評論家が「生活保守主義」なる言葉で勝利を説明したが、この頃ようやく認知されてきたイデオロギー終焉後の政治傾向なのだが、自民党もこれ以後はこの動きをキャッチできずに、もっと漠然とした「無党派層」なる言葉にかき消され、実態がより不明瞭になって、どの政党も手を拱いている状態である。今の無党派層も実態は80年代後半の流れと変わらないと思われるが、保守主義という言葉を使うとイデオロギー時代の亡霊を引きずるので安全という言葉を使いたい。
 そもそも食品安全、環境保護=左翼、治安対策=右翼 ということになり、未だにイデオロギーの呪縛を脱せない政治家や評論家には理解できないのだろうが、そもそも環境保護がなんで左翼の政策なのか*1こちらの方が意味不明なのである。食品と治安を同列に考え、ともに安全な方がいいという主婦の気持ちの方がよほど絶対的であり、イデオロギー論者の方がよほど相対的なのである。本来絶対的であるはずのイデオロギーが実は相対的であるというのは実に皮肉*2で、日本においてイデオロギーといいうものが根付かないまま崩壊した鍍金であったなによりの証拠である。
 ついでに言わせて貰えば、ネット社会は一番ヒドい。未だに無意味なウヨ・サヨ論に明け暮れる未開人が多すぎる。

*1:西側諸国で、保守政党が資本寄りの政策を出し環境問題に不熱心であたため、社会主義政党が党勢拡大のために環境重視の政策を打ち出したに過ぎない。東側諸国の環境政策はもっと酷く、環境問題は冷戦時のイデオロギーの範疇外の問題と考えるべき。むしろ現在においてはグローバル化と並んで重要なイデオロギーになってきたと言える。

*2:共産圏の核を認めるか否かで反核組織が分裂したのは好例。滑稽である。