被害者・加害者の理論

 被害者はできるだけ被害者の範疇を拡大しようとし、加害者はできるだけ自分が当事者でないフリをする。これが被害者・加害者の理論で、戦争等でよく見られる行動パターンである。被害国の国民は加害国の国民を誰でも構わず罵り、また被害者への同情が拡がり、被害者との関係が薄い人まで「怒り」が伝播し、まるで被害者のような振る舞いをする。加害国の国民は指導者や特定勢力のせいにしたりして責任を回避する。
 JR西日本脱線事故でも、見事までにこの現象が起きた。事故当日に宴会にふける社員はまさしく加害者の理論で、当事者意識がまるでない。加害者の理論の最も醜い部分を露呈している。またJR西日本の社員に暴力をふるったり、暴言を吐く行為はまさに被害者の理論の最も醜い部分を露呈している。
 先日も書いたが、人間は加害勢力に組み込まれると、本能的に「加害者の理論」が働き当事者意識がなくなるものである。特に現業員は経営参画意識が希薄であるからなおさらである。JR西日本みたいな醜態を晒さないためにも、企業は社員に「加害者の理論」が露呈しないように、総懺悔意識を持たせる教育が必要になるであろう。
 余り教育の成果が出すぎると、日本国民がアジアの国民に対する贖罪意識が芽生えてしまい、困ったことになるかもしれないが。と、ついアイロニカルな蛇足を入れてしまう。