愛国心と消費傾向

 中国での反日デモの際は、日本企業の中に今後の中国における日本製品の販売への影響を懸念する声が多く聞かれた。急速な市場拡大が進む中国において、マーケット確保に乗り遅れることはワールドワイド企業にとっては死活問題なのである。
 しかし実際には中国において日本製品の購買への影響は余り見られていないと言う。テレビで日本車を購入する中国人のインタビューを見たが、反日運動には無関心で、むしろ小馬鹿にしている言い方である。中国では高所得者を中心に日本でも発売されたばかりの日本製の高級家電を競って購買する傾向も見られる。
 これは世界的な傾向だが、高所得者や高学歴の人というのは世界市民的な思想を持ち、消費活動において愛国的消費志向がほとんど介在しない。もともと愛国心が根付いていない日本は当然そうで、高所得者が好んで価格の高い国産農産物海産物を選ぶ傾向があるが、これはあくまでもブランド信仰安全志向によるものである。
 一方、中国で「日本製品ボイコット」を叫んでいた学生などはそうかと言えば、基本的に購買力がないので、最初から影響力は限定される。
 また世界市場存在感の希薄なアメ車がアメリカではまだ売れているのは愛国的消費志向ではないかという説もあるが、私はビッグ3が極めてアメリカ中心のマーケティングを行っている結果であって、愛国的消費志向の影響は限定的であると考えている。

  
  まとめ

-消費活動において愛国心の影響は限定的でその影響力は無視できる。
-高所得者世界市民的思想が強く、愛国的消費活動はしない。
-愛国運動の実動者は購買力が弱く、その存在は無視できる。
-消費者は自分の財布を痛める場合は功利的な判断を下すため、国産品愛用運動みた
いな運動は、たとえ熱狂的な愛国心が蔓延する国家であってもあまり効果がない。

※ちなみに私は一次産品に関しては地産地消主義者ですが、工業製品の愛国的消費は
ナンセンスだと考えております。