反日と反中

反日と反中 (集英社新書)

反日と反中 (集英社新書)

 今日的問題を今という瞬間的問題やせいぜい第2次世界大戦での加害、被害という論点でものを言う言論が多い中。歴史的に広い視点を以って書かれている。
 江戸時代まで中国は日本人にとって常に羨望の対象であったこと。江戸末期から明治に入り、西欧列強に屈する清朝に日本人が失望し、更に明治時代に入り日本が力をつけるに従って、中国をむしろ蔑視する考えが拡がった点など、日本人の中国感を歴史的に考査している点は関心深い。
 今の中国は新興国的な文化的未成熟さは否めないものの、経済的には日本より明かに劣っているとは既に言えなくなってきており、日本人自身がいつまでも中国を蔑視する時代を継続している訳にもいかないのである。小馬鹿にし続けていたら、それこそ日本がウサギとカメのウサギに成りかねない。