拉致事件外交文書 金大中氏の訪日求めず 当時の田中首相

 同事件では、拉致現場から在日韓国大使館の金東雲1等書記官の指紋が検出された。当時の情報機関、韓国中央情報部(KCIA)が関与した日本に対する主権侵害の疑いももたれ、日本国内では金大中氏の訪日による原状回復を図るべきだとの声も強まっていた。警視庁は現在も事件の捜査を続けているが、水面下では事実解明前から首脳レベルで捜査打ち切り方針が決まり、原状回復も断念していたことになる。
 公開された会談議事録によると、田中首相は冒頭で(1)日韓両国が協力して捜査を継続する(2)捜査状況を日本に報告する(3)公権力の関与が明らかになれば、(日本から)新たに問題提起できる(4)書記官の捜査は逮捕、起訴も含まれる−−との4点の確認を求めた。
 しかし、金首相が即座に「建前として一応、言っているのか」とただすと、田中首相は「建前としてだ」と答えた。さらに「(日本の)捜査本部は徐々になくす」「実質的には日本側捜査は終結する」と述べた。
 最大の焦点だった主権侵害の有無について金首相は、金書記官がKCIA所属所属かどうかにも触れないまま「この事件で公権力介入というのは絶対にない」と言い切った。
 一方、金大中氏について田中首相は「彼はここに来ないほうがいい」と、訪日を求める政府見解とは異なる本音をのぞかせ、「彼がその程度の政治的センスがない人物なら将来はない」と語った。
 同会談は「金書記官は事件に関与の疑いが濃いとして免職し、捜査結果に基づいて法的に対処する」との韓国政府の方針決定を受け、日韓首脳レベルで外交決着を確認する場だった。しかし会談後、日本は「日韓とも捜査は継続」、韓国は「日本側捜査は終結」と食い違う発表をし、会談内容が不透明だった。
毎日新聞) - 2月6日
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20060206-00000000-maip-int

 こういう外交は汚いと思う人は多いだろう。ただ田中角栄はある意味外交センスはあった。昔の外交にはしたたかさがあって、相手に貸しを作って、後から大きなリターンを受けたり、日本側に不利なものを不問にさせたり、少なくとも小泉外交よりは国益に適っていたと思う。
 しかし民主国家では政権交代はつきもので、韓国側は金大中氏の流れを組む勢力が政権を維持し続けているし、日本は政権交代は起きていないものいの、旧田中派の勢力は退潮している。ちょうど日韓とも過去の権力を悪者にできる土壌が揃ったところで、こういう事実が公開されたのであろう。
 過去の人間を悪者にするのも汚いと思うかも知れないが、この件は日韓ともに現政権にプラスのカードであり、ゲーム的にはアリである。
 外交というのは勝つか負けるかというワンサイドゲームをできるだけ避け、互いの国の政権が共に得点カードを引けるように調整する極めて高度なゲームである。きれいごとばかり言うバカ左翼や、自国がワンサイドゲームで勝つことだけを望むバカ右翼には到底理解不能であろう。


 金大中は政治センスがなく将来がないというのは節穴でしたな。角栄