それでも二大政党

 私は細川政権誕生時に始めて選挙権を手にした典型的な2大政党論者である。2大政党の風土ができればもっと公平になれるのだが、2大政党への課程においては2大政党の形づくりを優先してしまい、どうしても自民党以外の政党へ肩入れしがちであり、私の投票行動も現にそうであった。
 こういう行動を取る人は私以外にも多いであろうし、それが第2党に票が集まりやすい環境、つまり民主党に甘い環境を生み出し、結果的にスポイルしてきた面は否めない。しかし、雨が降ろうが槍が降ろうが、55年体制のような自民党が確りしていればいい。野党は番犬でいいという割り切った考えには傾斜できない*1
 私が2大政党論を依然念願して一番の理由は、政治の公平性の担保の部分である。同じ政党が政権を担い続けている限りにおいて、癒着や制度疲労は避けられない。実際に政権交代が起こるか否かは別にして、政権がいつ変わるか解らない状況を維持することに官僚組織と政権与党には一定の緊張感が生まれ、特に検察組織の中立性が担保できる部分が大きい。
 最近は小泉首相が官僚を批判することによって、官僚組織のダークサイドが全く政権与党の責任外であるかの印象を与えているが、自民党は官僚組織を私的ブレーンにする見返りに官僚組織の自己増殖を黙認してきたのである。政権交代の可能性により、官僚組織を私的ブレーン化できなくなる効果は非常に大きい。

平時の二大政党

 選挙の時は二大政党が政策を争うという形は、少しは日本でも垣間見えるようになってきた。しかし平時の二大政党の形が全然できていない、というのが今回の堀江メール問題で露呈した。教科書通りに言えば、野党は与党のネガティブキャンペーンを張るのでなく、対案路線を行くべきなのであるが、現実はそれも難があり、今の状況で野党に教科書通りのことをやれというのも綺麗ごとだという感もある。
 今の状況をまとめると。

  • 実は自民党民主党では主張に差がなく、政府提出法案も両党賛成が多い。
    • 「野党は反対ばかり」と言っている人は、一部しか見ていないか、根っからの自民党支持者。
  • 「真の改革政党」路線が通用しない。
    政府提出法案が業界の反対で玉虫色になっているものも多い。そこで野党がスジを通した対案を出して世論の支持を集める。という民主党若手が考えているシナリオが全く通じない。
    • マスコミが細かい報道をしてくれない。
    • 自民党の方が印象操作が上手い。むしろ「政府案は骨抜きだ」として法案に反対した民主党に改革反対派と同じ守旧派のレッテルを貼るマジック。
    • 例え骨抜きであっても、「改革に一歩前進した」と自民党を評価するマスコミも多い。
  • マスコミは細かい政策論争より政局を期待している。スキャンダルを取り上げる方が、マスコミに取り上げられる。
    • 岡田路線のような真面目な方法では勝てない。なんやかんやマスコミ受けを狙わないとという雰囲気。

 堀江メール問題を生み出した背景はこれではないか?
 そもそも平時に野党は何をすべきかというビジョンのなさが根本的問題であり、永田というアンポンタンが登場しなくても、いつか壁にぶち当たる宿命であったのではないか?

平時に野党は何をすべきなのか?

 以下私の意見であるが、そもそも政策や改革の中味を争うという、保守2党論的な方向性には無理があるのですはないか?自民党が官僚組織を活用できる限り、人力的にも自民党を上回る政策を作り続けるのは至難の業である。55年体制に戻れとは言わないが、もっと大きなビジョンを出してゆくべきではないか。
 別に民主党左派に肩入れして社民主義に走れと言っているのではない。やや保守的な「公共」や「公正」を謳ってもいい。とにかく日本をどのような国にするのか、といった対極的ビジョンを出しつつ、個々の法案にそのビジョンをリンクさせ主張すればいい。そうすればマスコミももう少し対案を取り上げてくれるであろう*2。そうなれば、スキャンダリズム*3に存在証明を依存しなくても済むようになるであろう。

 

*1:実は自民党前衛政党論の支持者が増えつつあるのも事実で、少し恐ろしいのではあるが

*2:今の民主党の対案がマスコミに無視されるのは、方法論で差別化しているだけなので、はっきり言ってつまらないのである

*3:もちろん、立法府は強く身分保障され、司法や行政から守られている為。議員の不祥事は議員が確り追求することは今後も重要ではあるが