新直轄方式。不採算道路が無料になる不可解。
【不採算道路が無料?】
道路公団改革で、「不採算の道路は民営化会社は建設しない」とされたのですが、
後ほど「不採算道路も建設する」ことになりました。
で、不思議なのは、
「採算が取れる道路は通行料を徴収して建設費の回収を図る」のですが、
「採算が取れない道路は税金を投入して建設するため、通行料を徴収しない
(つまり無料道路となる)」ということです。
本来不採算道路こそ高い通行料を徴収すべきだと思うのですが、
なぜこのような矛盾したことが起こるのでしょうか?
id:itarumurayama:20060225
この前コメントをいただいた方のエントリーを見たら、面白い問題提起があった。
大変不可解な問題でしっくり来ていない方も多い問題だと思うが、マスコミが余り熱心に追求しないのが妙である。折角なので考えてみたい。
価格決定のメカニズム
一般に価格は「原価」「需要」「競争」で決まる。ただ高速道路というのは並行して別の会社の高速道路と競争するするような状況はない訳で余り考える必要がない。強いて言えば、一般道を利用した時との比較で参考にする程度だ。
「原価」と「需要」というのはかなり矛盾するもので、需要が多いほど料金を下げることができるが、需要を増やす為には料金を下げなければならないし、需要が多い場合は、むしろ渋滞回避のために高料金を維持しないといけない。
この二つのファクターによる決定価格が一致した点が道路の採算分岐点であり、この点での需要を下回る場合は料金を上げても下げても不採算にしかならないのである。であるから、「不採算道路こそ高い通行料を徴収すべきだ」という議論はあり得ないのである。
この場合、不採算道路を作るのを止めるのか、それでも作るのかという議論に移る。
社会資本領域と営利領域
不採算道路をそうしても作りたい場合は、社会資本領域に持ち込むことになる。つまり税金を投入することになる。同じ高速道路なのに、一方は営利領域で料金が徴収され、一方は社会資本領域で無料と言うのは。
だが、元々営利領域の高速道路と、社会資本領域の一般道があるのも変ではないか?
欧米では高速道路を社会資本として税金を投入して整備してきた国がほとんどである。日本がなぜ有料にしたかと言えば、高度経済成長期に道路建設を急ぐ必要があり、道路特定財源は命いっぱい一般道の整備に充当し、財政投融資等で高速道路を建設したからである。財政投融資は返還を要するから有料にする他ない。
しかし現在では一般道の整備は一巡する一方、マイカーの普及で道路特定財源の税収は潤沢で、一般財源化が叫ばれている程である。高速道路建設に道路特定財源を回す余裕があり、高速道路が無料で何が悪いという意見も通る状況にはなっている。
社会資本領域の営利化の知恵
社会資本領域と営利領域は対立概念ではない。日本の社会資本の多くは営利化しているのである。空港は発着料で賄われているし、鉄道は民営化され大手会社は利益を出している。電気、水道、ガスも営利だし、郵便だってまだ民営化されていないが、公社の状態で利益を出している。
社会資本領域を出来るだけ営利領域にするというのは新自由主義の基本的な考え方でもある。最近私は新自由主義に否定的なコメントを多く出しているが、この基本的な考え方には賛成だし、税の歳出削減を行う際には非営利の社会資本支出をできるだけ回避しなければならないからである。
社会資本支出の間接的回収
鉄道や郵便は直接的に資金を回収できている社会資本の例だが、完全に税金を投入し無償で国民にサービスを提供しても、完全に無駄とは言えない。港湾整備等は直接的には全く回収できていないが、貿易の推進により関税や企業業績の向上による法人税収入の増。雇用の増による所得税収入の増。更に消費の活性による消費税収入の増という形で国は回収できているのである。
受益者負担ゼロの社会資本投資であっても、経済効果のあるものに関しては何らかの税収の見返りもある訳であるから、場合によっては税投入は為されるべきである。