「少年は重い刑に」が25% 最高裁司法研修所が調査

 殺人事件の被告が少年だった場合、市民の4人に1人が「成人よりも刑を重くするべきだ」と考えている−。最高裁司法研修所は15日、市民と裁判官を対象に実施した量刑意識に関するアンケート結果を発表、両者に大きな隔たりがあることが明らかになった。
 調査は2009年春までに導入される裁判員制度に向け、量刑の「市民感覚」を探るため実施。全国8都市の市民1000人と刑事裁判官766人が対象となった。
 殺人事件を素材とし、39の量刑ポイントについて意見を聞いたところ、違いがはっきり分かれたのは少年事件。裁判官は「軽くする」が90%を超え「重く」はゼロだったが、市民は約半数が「どちらでもない」を、25.4%もの人が「重く」を選択した。将来の更生のため刑を軽くするなどの配慮がある少年法を前提とした「裁判官の常識」が通用しないことが浮き彫りになった。
3月15日共同通信
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20060315-00000152-kyodo-soci

 これは理解できなかった。なかなか。
 通常の刑法に関する論議は、応報刑主義か目的刑主義という対立で、最近は被害者感情論を前面に出した応報刑主義者が現行刑法を批判するロジックが多い。
 しかし、今回のアンケートは応報刑の問題では理解できない。犯罪者が少年であると、より憎しみが強くなるという心理は余り考えられないからである。
 私も「市民感覚」みたいなものに余り価値を感じない人間なので、無知な人間の戯言とこのような感情が存在することを無視してもいいのだが、やはり自分と異なる意見をじっくり考えなけえばインテリ左翼文化人と同じ穴の狢である。
 これは特別目的刑のうちの無力化効果の切り口で見ると理解できる。私が最近唱えている「安全マキャベリズム」(id:kechack:20060307)にも通じるが、市民感覚的には刑に応報刑的な役割と同時に特別目的刑のうちの無力化効果を期待し、教育効果には何ら期待していないのである。犯罪者を隔離することによって、それ以外の人間が安心な社会を実現できるというものである。
 この議論だと、男性ホルモンの分泌旺盛な少年はより粗暴性が高いので、少年犯罪者はより厳重に隔離して欲しいという議論が成り立つ。日本の若年男子は世界的にも稀に犯罪性向が低い(id:kechack:20051220参照)のであるが、それでも若年男子=危ないという先入観は存在する。
 このアンケートの回答者をぜひ年齢・性別別に集計して欲しい。恐らく少年に厳罰をと唱えているのは乳児から小学生ぐらいの子どもを持つ母親ではなかろうか?この年齢層は80年代まで最もリベラルな傾向を見せていたのであるが、近年この層が安全マキャベリズムに毒され、暴論が目立つ。最近の「子どもの安全」という印籠をかざせば何を主張してもいいという風潮はやや行き過ぎている感がある。
 私は、ハンセン病の悲劇や日系人の強制収容などの悲劇がすべて無力化期待から生まれたものである事実も踏まえて、「安全を求める世論」には100%迎合すべきでないという立場である。