フランスの若者雇用促進策「初期雇用契約」について

フランスの労働環境には私はどちらかと言うと理想に近いと考えていたので、今回の件と言い、移民の暴動といい考えさせられるものがある。
 労働問題については、私は昨年「結局、低付加価値/低賃金労働を誰が担うのか?」id:kechack:20051127 というエントリーで触れているが、この分類では以下のようなケースが存在する。

低付加価値の担い手

担い手 賃金 問題点
1 自国の低学歴者・落伍者 安い 国内の階層社会化
2 自国の低学歴者・落伍者 高い 国内のサービス物価の高騰
製造業の国際競争力低下
3 外国からの移民 安い 治安悪化
国内の単純労働者の失業
民族主義の軋轢
4 なし 低付加価値産業は国内に持たない 経済の外国依存が高まる

 フランスの場合、戦後のドゴール以降のエリート主義的保守主義の政策は結果的に3の方向に進ませた。イギリスが強固な労働者階層を保持したのに対し、フランスは農業部門を除き都市市民はできるだけ高付加価値な産業を担わせ、従来の低付加価値労働に移民を積極的に活用したのである。
 かといって政府が国民全体が高付加価値を生み出せるような教育を施したわけではなく*1、落伍者は最後の行き場であった単純労働を移民に奪われ行き場のない状況となり、恒久的な高失業率という構造になってしまっている。
 またフランスのように国民をできるだけ高付加価値を生み出せるように高等教育を推進すると、高等教育期間の卒業生の供給過剰の減少が起きる。どんなにエリート主義的保守主義により国民の質を高めても産業構造は依然として安価でマニュアル通りに働く労働力のニーズが高い。そうなると大卒者の大量無職者を生み出す。
 フランスがこの現状を打開するのは、付け焼刃的な労働施策より、国内で高付加価値な産業を育成することであるはずなのだが……。
 日本はどうかといえば、日本は1980年代まで2の構造であった。日本は低付加価値労働にも高い給与を支払うことで安定してきたのであるが、90年代以降の構造改革で低付加価値労働の非正社員化、社員であっても低賃金化が進み1の構造に変化し、格差社会と呼ばれるようになった。
 企業セクションから見れば2の構造は非常に重荷なのだが、国全体のことを考えれて1と2のどちらだベターであったのか、再検証するべきではないか?

*1:日本よりはかなり積極的な教育を施してはありが