タクシーは少ない方がいい

 タクシーが長蛇の列を成して客待ちをする光景はすっかり日本の都市で定着した。こんなことで採算が合うのかと思いきや、タクシーは費用が徹底的に変動費化され、台数を増やせば増やす程利益が出るスキームが出来上がっている。しかし、これが規制緩和の成果だと言われれば嘆かわしい。そういえば、規制緩和で需要を増やしたのは、タクシーや流通や外食などの低賃金労働ばかりではないか*1
 日本という国を豊かにするためには、より付加価値の高い産業を育み、高額所得者を増やしてゆかなければならない。もちろん、付加価値の高い産業は育成されてが、日本の労働者の質が低くミスマッチが起きてうまくいかないケースも考えられる。しかし、そんな贅沢な悩みなど起こるべくもないのが今の日本ではないか。増え続ける低賃金労働のために負け組が必要なのである。子供に愛国教育を施せばフリーターが減るとほざく政治家は死んだほうがいい、自らの政策が低賃金労働の需要を増しているのにもかかわらず。
 フリーターという言葉も、90年代に若者の拘束されない自由なライフスタイルのように美化されたが、あれは経済界と広告代理店による若者を低賃金労働に狩り出す陰謀ではなかったか?明治末期に都会の失業者を手引きし炭鉱のタコ部屋に送り込んだ手配師並みの反人道的犯罪である。
 私も規制緩和を一概に批判する論は好きではない。しかし、日本を貧しくする規制緩和などは許すわけにはいかない。実は日本は比較的低賃金労働者をなくすことに成功していたはずなのだ。例えば日本にはお手伝いさんという職業が非常に少ない*2。かなりのお金持ちでも使用人を使わず自炊する。これは無駄に低賃金労働者の需要を増やさないいい傾向である*3
 極論だが、日本は低賃金労働者が一人でも少なくなるような国になればいいと思う。タクシーなどは需要より少し供給が少ない程度でいいのでないか?

*1:IT産業があるじゃないか、という意見もあろうが、IT産業も一般社員の給与はさほど高くない。

*2:最近メイドが増えているのは気のせい?

*3:家内使用人の存在は、能力の高い女性の社会進出に有効との議論もあるが