昭和天皇、A級戦犯合祀に不快感…宮内庁長官メモ

 昭和天皇靖国神社A級戦犯合祀に関し、「だから私はあれ以来参拝していない。それが私の心だ」などと語ったとするメモを、当時の富田朝彦宮内庁長官(故人)が残していたことが20日、明らかになった。
 昭和天皇A級戦犯の合祀に不快感を示し、自身の参拝中止の理由を述べたものとみられる。参拝中止に関する昭和天皇の発言を書き留めた文書が見つかったのは初めて。
 遺族によると、富田氏は昭和天皇との会話を日記や手帳に詳細に記していた。このうち88年4月28日付の手帳に「A級が合祀され その上 松岡、白取までもが」「松平の子の今の宮司がどう考えたのか 易々(やすやす)と 松平は平和に強い考(え)があったと思うのに 親の心子知らずと思っている だから私(は)あれ以来参拝していない それが私の心だ」などの記述がある。
(読売新聞) - 7月20日

私の基本的な考え方は。天皇や皇族の私的意見はむやみに口外すべきでない。それは余りにも影響力が大きく、民主主義を拘束する力を有し、半ば勅令化し政治利用される危険性があるからである。
 富田氏の遺族も手記の公開には慎重であったのであろうが、最近の東京裁判否定論や戦犯無罪論といったちょっと極端な意見が台頭し、危機感から公開したのであろう。
 私は心の底では歓迎ムードなのであるが、やはり基本的な考えからはしゃぐのには慎重である。最初に報道したのが日経新聞ということから見て、経済保守勢力による政治利用との穿った見方もできる。
 経済界は経済政策では小泉-安部ライン支持だが、靖国参拝はやめさせたい。安部総理誕生は歓迎だが、靖国参拝はやめさせる有効な手段は、という切り札としては願ってもないものだ。
 首相の靖国参拝を支持してきた保守勢力も難しい対応を迫られるが、A級戦犯復権東京裁判否定といった目標をあくまで貫く勢力と、A級戦犯をトカゲの尻尾のように見捨てて、分祀した上で親拝までの復活を目指す勢力に分断されるかも知れない。もちろんA級戦犯の遺族ら自らが分祠を申し出るのことを期待するという方々も増えるであろう。