中国の外交力の強さを冷静に考えるべし

 中国の外交力を強くしているのは、今は何と言っても「消費国カード」でしょう。人口13億人を数え、その中で富裕層の割合が年々増し、消費力でまもなく日本を抜き米国に次ぐ地位になると見込まれています。ワールドワイドで事業展開を行っている企業においては中国市場でのシェア争いが今後の企業運命を決定づける状況にあります。消費力が大幅に拡大する国には、各国の政府の高官が自国企業の優位性確保のために頭を下げに列を為します。日本の場合は最近は国内のナショナリズムを気にしてかあまり媚びた外交をしなくなりましたが、フランスやドイツの中国への媚び振りは凄まじいですね。アメリカは媚びずに恫喝で自国企業の権益をはかかる国でありますが、中国では媚びないまでも結構したたかな通商交渉を行っています。
 むかつくかも知れませんが、これは「成長したもの勝ち」ということでしょう。日本だって高度経済成長期には優位性はありました。しかし日本は自国資本による経済成長をはかり、消費力が成長は、日本の製造業やサービス業の成長とパラレルで、消費力は専ら自国企業の製品購買で吸収されたため、外国からの陳情行列は余りありませんでした。
 中国は外資先行による経済成長で、国内製造業やサービス業の成長が追いついていないため、更に外資の宝の山となりました。先行外資はつまりユニクロのような中国の安い人件費を目当てに投資した外国企業のことで、この時点では日本は世界をリードして中国進出を図ったのですが、外資により豊かになった中国国民の懐を狙った二次投資では遅れを取ってしまいました*1。 
 最近は中国ビジネスを推進する経済界批判みたいな言説も散見されますが、そういう人たちには日本のビジョンをどう描いているのだろうか。普通に考えれば、日本は中国に近いという地政学的な優位性を最大限に利用し、更に中国に続くインドやその他アジア地域とのネットワークの中から日本自体の更なる成長の可能性を見出すのが定石でしょう。 批判するからには、ぜひ日本は21世紀どういう国として生きるかというヴィジョンも加えた上で、「中国ビジネスは重視しなくて結構」みたいな意見を見たいものです。小学館SAPIOは5年前から中国はバブルで崩壊すると書いていますが、リスクはあっても今後後退して後進国に戻ることはなさそうです。下らない妄言はいいですから、中国を重視しない日本の成長戦略があるならそういう話をぜひ聞きたいです。
経済大国に拘らずに文化大国になれ」、という意見もありますよ。でもこういう意見って昔は左翼がよく言っていた気がしますが。

*1:この遅れは決して外交に足を引っ張られたものではないが