日本沈没

 今更ながら観る。
しかし小松左京先生の国土が沈没するという設定は絶妙だ。国を守る(というか愛する人を守ることが強調されていた)為に命を捨てるという行為をテーマにしたストーリーは多いが、これまではすべて戦争が背景であった。そういう現実は戦争でしか起こり得ないのではあるが、戦争が背景になってりまうと妙に冷静になって泣けない。
 世の中、一方が巨悪で一方が正義などというのはあり得ない。まあアメリカはそういう構図を信じてやまないが、そう簡単な問題ではない。百歩譲って、相手が巨悪であっても、巨悪の国の兵士が巨悪な訳ではなく、彼らも自国が正義であると信じ、愛する人を守るために戦っているはずである。それに相手を巨悪に仕立て上げるというロジックは、つまり太平洋戦争では日本が巨悪にされていた訳で、巨悪国の兵士はおろか民間人も大量に殺戮していいということを支持してしまうので、巨悪というスティグマは使いたくない。
 結局戦争ってお互いに愛する人のために戦っている人同士が殺しあう構図じゃないの、と考えてしまうとどんな美談でも戦争がテーマの映画では泣けなくなる。私もハト派軍事マニアなので、戦争映画は好んで観に行くが、泣くこともヒロイズムに浸ることもない。
 その点で国土が沈没するとう設定は絶妙で、純粋に泣けてしまう。
 ついでに国土を大事にしましょうということも。国土はあって当たり前ではなく、世界には国土を持たない民族は多々いる。領土問題を叫んぶにのもいいが、そういう問題はすぐに解決できないし、一国民がどうこうできる問題ではない。そういう問題より、誰もができる問題として自国の環境や風土をもっと守りましょうよとつい思う。
 領土問題や愛国心を熱心に説く人の多くが環境問題に不熱心なのが以前から不満であった私。別に環境問題は左翼のやること等という決まりはありませんよ。保守派を自負する人ほど、環境問題を真剣に考えるべきだと思いますが。