朝まで生テレビ

 今回はなにかと岡崎久彦が目立っていた。しかしこの方の神学論的なアングロ・サクソン信仰はよくわからない。論理的でありながら最後はインスピレーション的な推論を展開する手法も、何とも言えない。この方の意見には大方首を傾げるのであるが、「大戦中に日英同盟を破棄したのが間違いで、日英同盟を維持していれば対米戦争は避けられた」という意見だけは同意する。
 ネット上での右翼系の方々の議論はこの辺がスルーされていて、対米戦争の自衛性を強調したり、対米戦争の誉れを語りだしたり、どうやったら戦争を避けられたという議論を避ける。
 ただ岡崎氏も大戦中の日本の判断の誤りをいくつか指摘しているにもかかわらず、責任の話になると途端に曖昧な話し振りになる*1。聞く人によっては、大戦中の日本に誤りはなかったとも解されてしまう。その辺は知識人の責任として自身の影響力を加味し、自身の言論が極端な戦争肯定論のための理論武装のために摘み食いされることも想定してもらいたいところだ。
 ただ岡崎氏は自民党の若手議員といった政治家や保守系知識人への影響力はあるが、「個人の判断に重きを置いて歴史を判断すると誤る」「是非・善悪で物事を考えたら状況判断を誤まる」と超現実的、排情的といった古い保守派の特徴を持っていて、扇情的な言論を好む最近の右傾化した若者に受けるような感じは余りしない。中には自分の本の購買層である右傾化した若者に迎合し*2、より扇情的な言葉を多用し、大戦中に日本の政策に誤りがあった部分は一部認めるにも関わらず、極端な意見の方が受けるのでスルーしたり、こういう保守系知識人や言論人が最近やたらに多く、より罪深い。この辺の迎合姿勢が議論を不毛にしている*3元凶である。
 もちろん、かつての左翼が戦前の政策はすべて誤りで、暗黒時代であるといった極端な主張をして議論を不毛にしてきたということも過去形*4で付け加えておく。

*1:そもそも近代国家で政治的失敗があった場合、どのように総括してゆくのかという議論が全く未成熟

*2:小林よしのり等は俺は読者に迎合しないと言っているが

*3:そもそも岡崎氏のようにレオポルト・ランケの言葉を引用し「歴史は教訓など得るためのものではない、ただ真実を求めるだけのもの」と言われれば、そもそも政治番組で歴史議論をする意味がなくなってしまい、議論すら起きなくなるのであるが。

*4:このような主張は現在では相手にされないか、存在しても影響力がないので過去形とした