安倍内閣はどこに向かう

 私も多くの人が思っていたのと同様、閣僚や首相補佐官人事を見て、これはタカ派内閣だとの印象を受けた。国会では野党は首相の右翼性を炙り出す作戦のようであったが、あっさりと「村山談話」「河野談話」の踏襲を口にし、産経新聞などに失望記事が並ぶ昨今である。
 自民党総裁選で勝つには右側の主張を多く取り込んだ方が有利。国政選挙では中間層や創価学会員の支持を得やすく左側に修正した方が有利なので、最初から計算づくの路線修正なのかも知れない。
 保守色の強い閣僚や首相補佐官は、ある意味封じ込めになる可能性もある。安倍首相自身が小泉時代皇室典範改正問題で、自分の考えと違う流れに対し、官房長官という立場上阻止できなかったのと同様、閣僚や補佐官は表立った批判はできない。
 安部内閣の発足直後の高い支持率は、最初から路線修正を織り込んでの支持と、本格的保守政権への期待がミックスした状況のものであった。まだ安倍は選挙が終われば爪を出すとの疑念を持っている人も多いので、外交上中道路線を取ってもこれ以上支持率が上がることはないだろう。むしろ保守層の離反が若干起きるであろう。
 もっとも保守層も、距離を置き始めて批判も辞さない人と、より安倍首相やその取り巻きに近づいて、影響力を強めようとしている勢力があり、今のところ後者の方が多い。
 ただ最初から保守色を鮮明にした場合のリスクの方が高いという計算は働いたのであろう。それに「村山談話」「河野談話」を否定して、その次に打つ手を考えられる人は誰もいない。外務官僚はアジア外交でわざわざ地雷を撒く気はないし、官邸もわすかなスタッフしかおらず、戦略など立てられないのである。