高校必修科目履修漏れ問題 

 そもそも社会科の学力を考察するということ自体が他の教科と大きく異なることがこの問題の背景にある。英語、国語、数学、理科は明らかに大学教育を受けるため必要な考査として位置づけられているのに対し、社会科の位置づけは極めて曖昧である。地理・歴史を大学に進学して専門分野として学ぶ人間は極めて少数であり、文系学部の主流は、経済学や経営学なのであるが、これらの学部では、社会科の基礎知識が多少欠落していてもそれ程深刻な問題ではない。強いて勉強して欲しいと言えば世界史ということで、受験科目を世界史にしている大学が多いのである。
 問題を複雑にしているのは、センター試験の存在であろう。国立の理系を受験する場合でも社会科から1強化を選択する必要がある。勢い学習範囲が狭く点の取りやすい地理に人気が集まる。
 受験のことを考えれば、文系生徒は世界史を、理系生徒は地理を集中的に学んだ方が進学の役に立つのである。公立高校にさえ予備校的な進学実績を求める風潮がこの結果を招いたと言えよう。
 世界史も日本史も地理も、いわば教養科目である。その知識が十分でなければ大学教育に耐えられない訳ではないが、社会人として必要な教養が詰まっている。ただ限られた学習時間ですべて網羅するのは困難である。
 以下、私見であるが、地理と日本史通史は義務教育で完結する。高校では世界史と日本の近現代史、地理。現代社会のうち世界情勢や通商などに特化した教科を創設して教えてはどうか。そして入試に関しては原則科目分けを行わず、全分野から出題する形にしてはどうか。