続:保守主義とは何か

 11月24日のエントリーの続きで、コメント欄でのhodashiさんとのやり取りでのお返事が長くなりそうなのでこのエントリーでまとめます。
 現在多様な「保守主義」が混在しているように見えますが、基本的に「伝統的な価値観を重視し、現代的問題を解決しようとする姿勢」という一種類のものだと思います。ただ伝統というものが過去の歴史の長さや諸外国の影響等により多様なために「保守主義」が多様になってしまうのでしょう。
 日本の「保守主義」を伝統の対象によって大まかに分類すると以下の4分類が可能です。

  1. 日本の伝統の中で農村的・ムラ社会的な価値観を重視する保守主義
  2. 日本の伝統の中で武士道的な価値観を重視する保守主義
  3. 日本の歴史の中で特に明治維新から戦前までの価値観を重視する保守主義
  4. 外来保守主義(新保守主義などアメリカ的保守主義統一教会など周辺国の保守主義)

 もちろん夫々分立しているのではなく、それぞれ相関しながら存在するものであります。
 江戸時代以前は儒教を影響を強く受けた武士の封建的な価値観に対し、農村では封建主義の影響を受けつつも共同体的なヨコの価値観が存在しました。むしろ農村的価値観が現代の日本にも色濃く受け継がれていると言えます。3の価値観は2の価値観を受け継ぎつつ、明治以降に外来思想を取り入れながら発達したものですが、戦後意識的に否定されることとなり、現代への伝播度が1より限定的と言えます。4の価値観は日本以外の国の保守主義が日本に移入されたものでありますが、日本の保守主義と近似的な部分もあり、現在では混在潜伏しています。
 日本の保守政党と言われている自民党は圧倒的に1の価値観がベースにあり、小泉改革で4の価値観が台頭し、安倍政権で3の価値観が顔を出したという見方もできます。1の価値観は何も自民党だけでなく、共産党にさえも影響を受けており、特に新自由主義が台頭する以前の日本の政党はすべて1の価値観の影響下にあったと言っても過言ではありません。
 私はブログ界でよく左翼のレッテルを貼られますが、1の部分の保守主義を色濃く持っている人間だと思っおります。だた3や4の保守主義には強い違和感を持っております。私は明治維新は支持し、戦前暗黒説を張る言論も支持しませんが、3の価値観を「日本の伝統」だと言い切る言説は支持できません。梅原猛氏の言葉を借りれば、この時に廃仏毀釈という奇妙な運動を行い、長い歴史の間で定着した神仏混淆を否定し、国家神道という人工宗教を作り上げたのであります。当時キリスト教アイデンティティを基盤とする西欧諸国に対抗するためには国民を統合する強いイデオロギーが必要であったという背景がありその行為自体を非難する気はありませんが 、この行為自体は「革命」であり「保守」ではないのであります。
 この「革命」も皇国史観など歴史的正統化運動を経て、革命による断続性が忘れ去られ、いかにも古代の価値観が継承され今日があると信じられるようになったようです。3の価値観を持つ人は、明治維新の革命性や価値の断続性をほとんど問題にせず、古代から存在する日本の伝統的価値観が永続しているような錯覚に浸っていることが多いのですが、私には違和感があります。「保守主義」の正統はあくまでも1であり、3の価値観は「旧革命主義」と言うべきではないだろうか。