御手洗ビジョンをどう見るか

 正月早々、御手洗ビジョンブログ界を騒がしているので、私も言及しておく。

山口浩氏のブログより引用
 そもそも、財界が経済政策やら税制やらに対して発言するのは利害がからんでるからわからなくもないが、国民の行動や思想信条にまで口出しするのは、商人の「分」というものを超えているのではないかと思う。

 御手洗ビジョンにおいて、個人の行動や思想信条にかかわる「教育再生」「公徳心の涵養」「憲法改正」については最後の方に言及されている。私は大事なことだから最後の書いたのではなく、メインは経済や税制にあり、信条面の言及は保守政治に対するリップサービスに過ぎないと見ている。
 戦後の保守政治は、経済重視。軽武装保守本流と、憲法改正や伝統的価値観の復興を目指す傍流保守の二人三脚によって成り立って来た。経済界というのは前者の保守本流と表裏一体となって歩んできたが、両者はお互いの利害が対立しない範囲においてお互いの価値観を追認してきのである。
 御手洗ビジョンはこのような伝統的な相互追認に過ぎないと見ている。もちろん御手洗氏をはじめ、経営者の多くが安倍政権の伝統的保守政策に理解があっての上だが、ガチンコな保守主義者ほどの熱意はないと思う。
 ただ財界がこれほどはっきり国民に直接伝わる形で意見表明のは異例だ。アメリカ流と言うか…。
 わかりやすいと評価する意見もある。

 日本の財界活動というのは伝統的に分を弁え阿吽の呼吸で腹芸をしていたはずで,こうやって叩きようのある提言が平場に出てくるだけでも随分と庶民に近づいたものだし,基本的に歓迎すべき傾向という気がする。
 南方司氏のブログより

 恐らく、これまでは表面化していなかっただけで、財界というものは以前から企業エゴ剥き出しの要求を自民党に対してしていたに違いない。「企業献金は社会的責任」なんて綺麗な話でなく、露骨な見返りを期待しているからこそ企業献金が存在しているのであるから。
 ただ経団連がどういうつもりでこのようなものを出してきたのか今ひとつよくわからない。国民の間にネオリベラリズムが支持される土壌があると確信しているのか、それとも財界が嫌われ役を買う覚悟があってのことか。
 前者だとしたら、それは明らかな過信である。小泉政治のような詭弁の上塗りのハリボテ状態であればネオリベ的政策がいかにも支持されるような状況は作れるが、ガチなネオリベが支持される土壌は、日本はおろか世界中でも例はない*1御手洗ビジョンのようにガチに提示されて、これを支持できる国民は少数であろう。
 後者だとしたら。財界に負のレッテルが貼られることにより、その支援を受けている自民党にとって大きなマイナスになるであろう。自民党労働組合守旧派のレッテルを貼ることにより、民主党に大きなダメージを与えることに成功し、一昨年の総選挙の圧勝の一因となった。これまで財界はその実態が見えなかったために、レッテルを貼ってもダメージにならなかったのだが、経団連が負のイメージを抱えることにより、自民党がダメージを受ける立場になる。経団連自民党に援護射撃したつもりだろうが、実態はいい迷惑ではなかろうか?

*1:ネオリベは国民を騙しながらでしか実現できない