失言に甘い人たち 〜本音アドレナリンに麻痺した愚か者たち〜

 柳沢厚労相の「女性は子どもを産む機械」発言。さすがに「よくぞ!言ってくれた!」などという愚言を述べたブログはないが、野党が批判のトーンを強めた辺りから擁護的な発言が増えている。「確かに問題発言だが、辞める程のことではない」と言った意見が多いののが、明らかに言語道断で当然大臣を続ける環境にないと判断するのが妥当であり、擁護論は甘すぎる。有権者の甘い態度は政治をダメにするだけで、何の利もない行為であり、擁護論を張る一般ブロガーたちを徹底糾弾したい。
 擁護論を張る人のは、潜在的自民党支持で野党に批判的だからというケースもあるが、全体的に「本音を言う政治家が好き」という特徴がある。自身もブログやSNSで普段なかなか言えないような(敵を作ったり、批判される)内容を書いており、誰にも邪魔されずに本音を吐くことで快感を得る習性がある。だから本音をストレートに吐出する政治家にシンパシーを抱くのである。
 これまでの政治家の失言の多くは歴史認識に関するもの*1が多いのだが、80年代はこの類の失言で多くの大臣が辞職に追い込まれたり罷免されたりした。ところが、最近はこの類の発言で外交上ぎくしゃくしても大臣のクビが飛ぶことはまずない。「良くぞ言った!」という一部の熱狂的支持世論が髣髴し、自民党議員は辞任要求はマイナスと見て辞任を求めないばかりか、野党さえも辞任要求が世論の支持を得られそうもないと見てトーンダウンしてしまう。このような状況が続き、政治家も本音をずばずば言ったほうが拍手喝采されると勘違いして、発言へのデリカシーが著しく低下してきている。
 まあ柳沢大臣の発言はよほどの極端なアンチフェミニストでもない限りは拍手喝采する類の発言ではないが、最近の本音を言う政治家へのシンパシーという世論の流れが批判を和らげている。
 本音なんて何の努力なしで、デリカシーを押さえれば誰でも容易に発することができる。そんなことで政治家を評価していたら、まさしく亡国である。

*1:支持する人は失言といは言わないが