少子化問題解決には徹底的な社会政策しかない。

 国民啓蒙は本当に効果があるのであれば、「国が個人の権利に口出すな!」と批判があろうと、推進しても構わないと思うが、私は効果が余りないと思っている。個人的な主義で子どもを作らない人がどれだけいるのか? 諸事情で子どもを作れない、或いは生まれないといったケースの方が圧倒的に多いのではないか?こういった少数派を思想改造する行為はえてしてそれで問題解決できるような錯覚に陥り、本質的問題解決を遠ざける。教育問題でいじめる生徒の登校停止や、不適格教師のクビで問題解決できると思っている風潮が教育改革を遠ざけている姿に似ている。
 少数派にちょっかい出している暇があったら、できれば子どもを欲しいと思っている多数派に対して施策を講じた方がよほど効果がある。産みたいけど産めない諸事情をできるだけ取り除くのが社会政策である。別にフランスの真似をすればいい訳ではないが、日本とフランスの文化的差異を論じてああだとうだ言っている暇はない。まずは少子化対策の予算がまるきり違う。対GDPで日本の少子化対策予算は僅か0.6%だが、フランスは2.8%もの予算を投下している。
 日本の政策はどこか、できれば裕福で恵まれた家庭にこそ子どもを多く作って欲しいという優生思想が政策背景にあって、手当より税控除中心、婚外子不利の民法が温存されている。フランスもかつては政策背景に優生思想が介在したが、本気で少子化対策に取り組んでいる国は、理想論など言っている場合でないと、とにかく子どもを産みたい人が産めるような政策に転換している。子どもが4人以上いる家庭は税金がゼロになるはおろか、潤沢な手当が受給できるくらい徹底したことをやらないとダメだろう。
 そうなると、生活のために貧乏な人が子どもを作る等という人がいるだろうが、そんな意見はもうきれい事である。貧乏子だくさん上等で、DQNな親からDQNな子どもが再生産されるというのは先入観に過ぎず、昔は貧乏な家庭に生まれても立派な人間はいくらでも育った。
 更に日本の場合は長時間労働という構造的問題を抱えており、これが出産環境の大きな弊害になっている。フランスより変革すべき事項はより多く、相当なエネルギーが必要である。