「支持政党なし」層の3つの潮流

 まず無党派層と支持政党なし層を敢えて分けたい。無党派層は積極的に特定政党支持者にならなないことを是とし、選挙ではその都度ベターな候補者に票を投じる人を指し、支持政党なし層は、特定の政党の支持者になることはやぶさかでないが、支持したい政党がないという層。もちろんそんなにきれいに分かれるものではないが、日本のマスコミはあまりに同一化しわかりにくくなているので、敢えて分けたい。
 現在、安倍内閣の支持率低下で注目されているのは「支持政党なし」層の増加である。基本的には小泉内閣時代の自民党支持*1が離反している訳である。離反勢力には主に三つの潮流がある。一つは無産保守派と呼ばれる層であり、もう一つは構造推進派、そしてもう一つが格差是正派である。
 無産保守派は、まず安倍内閣発足直後のアジア訪問やあいまい戦略などで、過度に安倍内閣の保守性に期待していた層が離反した。ただこの時期に離反したのは相当な原理的な保守派であり、多くは安倍内閣はいつか独自の保守色を前面に出してくれると期待し支持を続けた。実際にこの層の離反が目立ったのは、昨年12月以降安倍内閣が財界寄り金持ち優遇の税制を明確にして以降であろう。自民党は結局「経済保守政党」で、政治的な保守色が中途半端なまま、経済界を最優先にし、金持ち優遇で弱者に厳しい政策を打つ出す政党を支持することを「保守」を自認する人間が支持するのが当然みたいなこれまでの風潮に疑問を持つようになった。
 構造改革推進派は、安倍内閣小泉改革の継承者と支持してきた人たちで、12月の優勢造反組の復党や、「古い自民党」への回帰で嫌気が差して自民党支持から離反した層である。
 そして格差是正派は、実は優勢選挙の頃はなんとなく自民党を支持していたが、小泉政権末期に、小泉改革が痛みだけ伴って幸福をもたらさないと悟り、一旦自民党支持を離れたが、安倍内閣小泉改革の修正を期待して、もう一度自民党支持に戻った層である。しかし、この層も安倍内閣の財界優先、金持ち優遇で弱者に厳しい政策を目の当たりにして離反した。
 この三者は、一部錯綜していてきれいに分けられるものではないが、ある程度分けて考えないと、今の上級は見えてこない。

民主党の支持率が上がらないが

 せめてもう少し、安倍政権に失望した層を分析すれば、少なくとも支持率が下がるようなお粗末なことはないはずだが、結論から言うと、頑張ってもそれ程支持率を上がらない。安倍内閣から離反した層のニーズはかなり矛盾しており、すべてを満たすフォローは不可能だからである。今、民主党が取り込もうとしているのは、格差是正派である。この層は明確な政策を打ち出せば、取り込みが可能で、これについてマスコミが民主党の努力不足を指摘するのはもっともだ。ただ無産保守層と構造改革推進派を満足させるのは、結局これまでのコアな支持者のニーズと矛盾するので、中途半端な対応しかできないであろう。
 元新党さきがけ田中秀征などは、民主党構造改革支持派の取り込めを狙えと言っているが、これまで小泉改革批判層を取り込んできた手前今さら難しいであろう。小泉改革のここがよくてここがダメだったと丁寧に一つ一つ検証するのが政治的には正しい総括なのだが、「わかりやすさ」を枯渇している有権者には理解し難いであろう。田中秀征という人は頭が良すぎて選挙が下手だった人なのだが、まさしく「正しいけど選挙に負ける意見」だ。

マスコミの政党政治感がおかしい

 マスコミは「支持政党なし」層が増えていることについて、自民党民主党の二大政党の責任としているが、基本的に二大政党制はおいては、主要政党の政策が拾え切れない層が多く出るのである。安倍総理のように論点をぼかして広い支持を得ようとすれば、あいまいだと批判される。民主党のように左右で幅広い議員がいるとバラバラな政党だと批判する。これは二大政党制を理解していない証拠である。もし二大政党制を支持するのであれば、受け入れざるを得ない現象なのである。
 もちろん二大政党制がいいとは私もいいとは思っていない。私も自民党新進党民主党が並存していた時代ふが一番良かったと思っている。結局、理念うんぬんより小選挙区制度で勝つために政界再編が余儀なくされてきたというのがこれまでの経緯である。ただマスコミが批判している論点は明らかに二大政党制によってもたららされた弊害であるのに、二大政党制やその背景にある小選挙区制度については、マスコミも「小選挙区制度導入」=「政治改革」というキャンペーンに加担してきたために非常に歯切れが悪い。
 もちろん、マスコミどうこうという問題以前に、有権者がそろそろ小選挙区制度と二大政党体制がいいのか考えなければいけない時期に来ていると思う。

*1:自民党支持ではないか小泉支持という層もあるが