慰安婦問題での対応を誤った

 正直言って他国の人が愛国心を鼓舞する姿は見ていて気持ちのいいものではない。日本人が愛国心を鼓舞する場合も外国人にはあまり気持ちよく受け入れられないものとの自覚の上で鼓舞せねばならない。特に歴史的恥部を正当化する意見などは関係国はおろか第三国さえ理解してくれることなんてことはまずないのである。
 昨今の従軍慰安婦問題はその意味で、日本は罠に嵌ってしまった。日本国内で従軍慰安婦否定論などが高まれば高まるほど、諸外国は日本に嫌悪感を抱く。中国や韓国など当事国はともかく、欧米各国にも嫌悪感を抱かせてしまっている。 マイク・ホンダ氏も思わぬ誤算だったのではないか。日本は「旧日本軍の従軍慰安婦問題について日本政府に謝罪を求める米下院の決議案」に対しては静観すべきだったのである。余計なときに余計な勢力が騒いだために自滅してしまった。
 下村博文官房副長官慰安婦に軍は無関係との発言に対し、安部総理が「おわび」のコメントを表明したが、結局政治家の戦略なき発言で、その場を取り繕うための謝罪をまた繰り返したのである。土下座外交だとかなんとか騒いでいる輩はよく考えたほうがいい。今まで、日本は藤尾正行奥野誠亮永野茂門桜井新など戦略なき持論を発し、問題解決のためお詫びの上塗りや歴史の共同研究といった対処療法でその場をしのいできたのである。彼らは自分の発言が押し通せて、かつ日本の外交上利益になる出口戦略を携えないままその場の勢いで適当にしゃべっただけなのである。こんなものは百害あって一利なし、「よくぞ言ってくれた」と拍手喝采する有権者も確かにいるが、外交上何も有利なカードにならない発言に拍手喝采する有権者は亡国の徒に過ぎない。戦略亡き三流政治家の虚言によって日本が何度も土下座する状況を招いたと言ってもいい。
 従軍慰安婦に軍の関与がなかったと主張する人は、調査するなら静かに調査すべきである。今、あなた方が騒いで国益にかなうものは何もない。歴史学的な確証と少なくともアメリカ人くらいには支持されるくらいの戦略を見出して始めて政府関係者はこの問題への関与が許される。そうでない限りは政府関係者は従軍慰安婦に軍の関与がなかったと主張する人に与するべきでない。