なぜ女性が石原慎太郎を支持?

朝日新聞社は17、18の両日、東京都内の有権者を対象に都知事選に関する第2回情勢調査を行い、取材で得た情報をあわせて告示前の情勢を探った。現職の石原慎太郎氏(74)の支持が前回調査(10、11日)から拡大し、前宮城県知事の浅野史郎氏(59)にやや差をつけている。石原氏は幅広い層に浸透し、特に女性の支持が伸びた。
 3/19 朝日新聞

 このニュースはかなり衝撃的だったようだ。特に石原都政に苦い思いをしているフェミニストの方々にはショックだったようだ。なぜ「閉経した女性無用論」「ババア」と侮辱されても、なぜ同じ女性がこうも石原を支持するのか理解に苦しいところであろう。ただフェミニストの方々はアンチ・ジェンダーフリーバックラッシュについてもう少し客観的な分析ができないと、この流れに対峙する策を打てないであろう。意外なことに現職の石原知事の最有力対抗馬と目される浅野史郎候補が冷静なコメントをしていた。

 差別をしている人たちには差別をしているという意識がない。むしろ女性や障害者を保護すべき対象と見ている。俺が稼いでくるから、お前はきちんと家庭を守れみたいに。ただ保護の対象が自己主張をした瞬間に態度が変わる。「なまいき」だと。その瞬間から差別が始まる。

 これは重要な視点だ。もちろん浅野氏の視点がいいからと言って選挙の勝ち負けは別問題で、この分析から短期間に対応策を取るのはなかなか難しいであろう。ただ差別発言をする人をすべて最初から悪意ある差別主義者というレッテル貼りを行う古典的左翼とは違う。ただ支持者に多くの古典的な左翼が含まれているところが浅野陣営の難しいところであろう。
 石原慎太郎は基本的に悪意ある差別主義者というところから、「女性は弱く守るべき対象」と思っている人だと置き直すとわかりやすい。そうすると、多くの女性が石原慎太郎と同じ土壌に乗ってくる。女性の多くは、男性に守られた方がトクだと思っており、やたら権利を主張する女性を苦々しく思っているのである。
 また複雑なのは、更に保守的な女性とフェミニストどちらにも含まれない、キャリア志向女性という層が存在する。この層は自立心が高いが、旧来のフェミニストの主張を嫌い、政治的には新自由主義志向である。小泉政権を熱狂的に支持したのもこの層だ。本来自立志向の女性を吸収してきたフェミニズムが力を失い、左翼的な政治による女性解放でなく、「男と同じ条件で勝つ」というのがこのネオリベな女性たちである。
 自民党なぞは古い自民党的な要素で保守的な女性の支持を集め、新しい自民党的な要素でネオリベな女性の支持を集めるが故に女性も支持が高いのである。石原慎太郎ネオリベラリストではないかも知れないが、浅野史郎格差是正の方向にシフトしているので、格差肯定論の多いネオリベ女性は石原慎太郎に流れると可能性が高い。
 石原慎太郎に女性票が集まるのは半ば構造的なものであり、これに楔を打つのは容易ではない。できるとしたら保守的な女性の現実問題に切り込むしかない。既に男性に養ってもらう選択肢が奪われた薄給社会。子供ができても仕事を続けなければならないが、育児との両立の問題。実は保守的な女性の存在基盤は崩壊寸前なのである。この辺は石原慎太郎の政策の弱点でもある。