年金問題に関して痛い読売のミスリード

 私はマスコミが特定のイデオロギーや政党に偏るもは全く構わないと思っている。ただし、それは新聞自体にポリシーがあって、その上でこの政党が我々の主張を実現するとして支持を表明すべきである。特定政党支持ありきでは、議論の不毛を招き、マスコミのミッション放棄に繋がる。
 最近非常に由々しいのが読売新聞の年金問題での論説である。
 読売新聞は小泉政権時代に提出された社会保険庁改革関連法案に対し、社保庁の「看板の掛け替え」にとどまり抜本改革にはほど遠いと酷評し、保険料と税金の徴収一元化こそ行政の効率化こそ改革の本丸との主張している。これは非常に秀逸な論説で、私の年金に対する考え方の礎になっている。

保険料と税金 徴収一元化必要 2006/3/11 読売

 政府が10日に閣議決定した社会保険庁改革関連法案は、不祥事が続出した社保庁の「看板の掛け替え」にとどまり、抜本改革にはほど遠い内容だ。(社会保障部 石崎浩)
 法案は組織の見直しについて、〈1〉2008年10月から、社保庁を年金部門と政府管掌健康保険部門に分離する〈2〉年金部門は引き続き国の一機関と位置づけ、外部の人材を登用しやすくするなど、効率的な組織運営を目指す――としている。
 だが、年金保険料の無駄遣いや支給ミスなど一連の不祥事を受け、政府・与党が「社保庁の廃止・解体」と説明する割には、小幅な手直しにとどまる内容だと言えそうだ。
 法案では、年金保険料の徴収は社保庁、税金は国税庁という縦割り行政は放置されたままだ。保険料も税も、国が強制的に徴収する点では共通しているのに、別の役所が、ほとんど連携せずに徴収している今の仕組みは、効率的なのだろうか。
 米国では、公的年金の保険料は「社会保障税」と呼ばれ、内国歳入庁が税とともに徴収している。英国でも1999年の改革で、社会保険料と税を同じ機関が徴収する仕組みに改められた。徴収一元化を実現している国には、他にもカナダ、スウェーデンなどがある。
 日本でも、「社保庁は徴収業務から完全に撤退し、保険料と税を国税庁が一括して徴収すべきだ。徴収の効率が上がり、未納対策としても有効だ」(西沢和彦・日本総研主任研究員)という意見が、有識者などの間で根強い。小泉首相も04年5月の国会答弁で、国税庁社保庁の統合について「今後、議論の対象になる」と一定の理解を示した。だが、財務省厚生労働省が統合に水面下で抵抗、本格的な検討は行われなかった。
 また、自営業者などの国民年金保険料の徴収を、国の機関だけに任せておいて大丈夫なのかという問題もある。
 国民年金保険料は、かつては全国の市町村が徴収していたが、02年4月から社保庁に業務が移管された。国民年金は国の制度なので、保険料の徴収も国が行うべきだ、という考え方に基づく措置だ。
 だが、保険料未納率は市町村が徴収していた01年度の29.1%と比べ、04年度には36.4%と、7.3ポイントも悪化した。市町村が全国に約2000あるのに対し、社保庁の出先である社会保険事務所は312か所。社会保険事務所は市町村と比べると個々の住民の実情を把握しておらず、徴収の効率が悪い。このことが、未納が増えた大きな原因だと指摘されている。
 未納問題の解決に本気で取り組むなら、徴収業務の一部を市町村に戻し、国と市町村が連携して未納者に対する督促などを行うことも選択肢となりうる。だが、法案はあくまで徴収を国の業務と位置づけ、業務の民間委託を進めるという内容にとどまった。
 政府・与党は今回の法案で、年金新組織を従来のような厚労省の外局から、国土地理院などと同じ国家行政組織法上の「特別の機関」に変え、名称も「ねんきん事業機構」に改めるが、実態は外局とさほど変わらない可能性が高い。
 この内容で国民の信頼を回復し、保険料の未納率を引き下げることが果たして可能なのか。国会審議で、問題点を十分に掘り下げる必要がある。



 1年以上経ったが、6/23の社説では、安倍内閣社保庁改革法案に賛意を表明し、民主党が主張している国税庁社保庁を一体化した「歳入庁」構想を公務員労組を温存しようとするものだと批判している。

国会会期延長 年金記録漏れだけが争点なのか 6月23日読売社説

 重要な課題があれば、会期を延長してでも処理するのは、政治の責任である。
 国会の会期が7月5日まで12日間延長された。この結果、参院選は7月29日投票となる。
 与野党対立のあおりで、国会には、社会保険庁改革関連法案、年金時効撤廃特例法案、国家公務員法改正案などが、積み残しとなっている。
 社保庁改革法案は、社保庁の廃止・解体、非公務員化によって、“お役所”体質の払拭と転換を図るものだ。
 一般常識とかけ離れた長年の労働慣行の下で、5000万件余もの年金記録漏れの問題や、職員の不祥事などが相次いで起きたことを考えれば、速やかに成立させ、改革を急がねばならない。
 民主党は、国税庁社保庁を一体化した「歳入庁」構想を主張しているが、事実上、公務員労組を温存しようとするものだ。これでは、問題の根本的な解決にはなるまい。
 年金時効撤廃特例法案も、年金記録漏れの点検と、正確な納付記録に基づく年金支給の作業を進めるための基本的な前提条件を整えるものだ。これも、早期成立が必要だ。
 民主党など野党は、参院選に向けて、年金問題を争点に政府・与党を追い込もうとしている。安倍首相の側にも、年金問題内閣支持率が急落しているため、社保庁改革法案などの成立で巻き返す意図がうかがえる。
 だが、年金問題は、国民生活の基本にかかわる。いたずらに政争の具にするのではなく、問題解決のための建設的な議論が必要だ。
 この間、与野党の応酬は、年金記録漏れに集中した。肝心の年金制度改革の論議はどこへ行ったのか。政治の本来の責務を忘れたものと言わざるを得ない。
 ただ、安倍首相が今国会中の成立に執心し、会期延長を決意したとされる国家公務員法改正案には、やはり疑問がぬぐえない。
 天下りを根絶するために官民人材交流センター(新・人材バンク)を作るという。だが、早期勧奨退職の慣行の見直しや、スタッフ制の創設、定年延長などがないままで、新・人材バンクが円滑に機能するとは思えない。
 野党は、「延長してもなお審議時間は足りない」とし、法案の時間切れ、廃案に追い込む姿勢だ。内閣不信任決議案提出のタイミングもうかがっている。延長国会では与野党対決が強まるだろう。
 大事なのは、参院選に向け、重要政策の選択肢を示す論戦だ。いたずらに混乱劇を演じてはならない。


 保険と税の一体化は、読売新聞がかつてこれこそ改革の本丸と言っていた内容ではないか?何たる二枚舌だ。
 もちろん、小泉内閣時代に国の特別機関に移管とされていたものが、安倍内閣では非公務員型の組織となった。しかしこの変更は改革イメージをアップするための側面が強く、やはり社保庁の「看板の掛け替え」の粋を出ていないのではいのか?
 今回の法案で、社会保険庁職員を非公務員組織に転籍させても、法的には分限免職は可能だが、訴訟の問題から希望者はほぼ全員雇用を継承することになるであろうと言われている。公務員が団体職員に身分が変わって意識改革になるのであろうか?抹消な改革で必要以上に改革が為される誇大キャンペーンが為されているような気がする。
 社会保険庁職員が痛い目に遭うような改革をすれば確かに国民はスキッとするが、本質的には「年金をなんとかしろ」という話であって、その問題が不明確なまま脇道の話をしてても国民は納得しないであろう。
 読売新聞は年金はどうあるべきと考えているのか?重要政策の選択肢を示す論戦が必要と言いながら、本質的な議論を歪め、政党間の政争を煽るだけの愚かな社悦で、何を言いたいのかわからない。先ほどの論説とのレベル差は歴然としていて、とてもエース級記者が書いた社説とは思えない。
年金制度に詳しくない記者が、自民党に秋波を送るためだけに稚拙な社説を書かないで欲しい。