年金問題 周回遅れの対応をして改革した気になるな!

 明日、社会保険庁改革関連法案が強行採決される模様だ。
 マスコミもきちんと報じないので、勘違いしている人が実に多いのだが、社会保険庁改革関連法案は年金の記録漏れ問題を解決するためにまとめられた法律でも何でもないのである。実に3年前の小泉政権時代からの懸案事項がやっと法制化されたに過ぎないのである。
 3年前の丁度今頃は、閣僚の年金未納問題が次々発覚し、当時の福田官房長官民主党菅代表が辞任。参院選では自民党年金問題で敗北した。ところが、政治家の未納をリークしていたのが社会保険庁職員であることが判明し、調査の結果約300名の職員が未納情報等の業務目的外閲覧を行っていたことが判明し、行為者及び管理監督者の合計513名の職員が処分された。
 このモラルの低い組織を改革せねばならないと、2004年8月 「社会保険庁の在り方に関する有識者会議」(細田博之内閣官房長官の私的懇談会、座長=金子晃・慶應義塾大学名誉教授)が設置された。これが年金改革の発端である。
 http://www.kantei.go.jp/jp/singi/syahotyou/index.html


 この当時は、社会保険庁職員と自民党の叩き合いみたいな構図で、自民党を怒らせてしまった社会保険庁が反撃を受けたような感じで改革が始まった。


2005年1月 社会保険庁を解体し、国の特別の機関「ねんきん事業機構」に事業を引き継ぐことが決定。
2005年3月10日 社会保険庁改革関連法案を閣議決定


この時は改革は社会保険庁職員は国家公務員の身分のままで、極めて軽微な改革であった。ただ世論やマスコミは年金保険料が年金給付以外にグリーンピア等の公共事業や職員の福利厚生に流用されていた問題をより重視しており、この程度の改革でマスコミからも看板の架替だけで中身のない改革と評判もよくなかった。
 安倍政権になり、社会保険庁改革関連法案を廃案とし、年内に抜本的な社保庁改革大綱を策定する方針を固めた。
 村瀬長官が年金保険料の徴収率を競わせたのがきっかけに、職員が年金保険料の徴収率を上げるために不正に保険料を免除する不祥事が相次ぎ、社会保険庁への批判が高まった最中であった。安倍総理では「ねんきん事業機構」法案では到底世論の支持は得られず、また自身の改革イメージを演出狙いもあり、非公務員型の新組織に移行させることを明言した。
 http://www.yomiuri.co.jp/iryou/news/kaigo_news/20061023ik09.htm


3/7 自民党厚生労働部会 日本年金機構法案を了承
http://www.jimin.jp/jimin/daily/07_03/07/190307a.shtml


この後、年金の記録漏れ問題が明らかになるのだが、その問題には最初は真剣に対応しようとせず、とにかく日本年金機構法案を通すことばかり考えていた。
 その後、世論が沸騰してしまい、後手後手に年金記録漏れ問題の対応策を出すのであるが、明日強行採決しようとしている法案は、3/7の部会で承認されたものがベースである。結局は過去の社保庁職員の「個人情報覗き見」「年金の不正免除」に端を発した法案に過ぎないのである。今年になって明らかになってきた社会保険庁の問題、年金制度の問題は、そんな問題より遥かに大問題で、非公務員組織といいながら社保庁をそのまま行政法人にしただけで解決できるような代物ではない。この法案について再度検証しようとさえしない。


参考:日本年金機構法案の概要


 とりあえず、今回の社保庁改革関連法案は改革の一歩なのだから、成立させるべきだとの意見もあるが、私は大いに疑問である。日本の政治は中途半端な骨抜きの法律を作って改革した気になり、実は何も変わらなかったという歴史の繰り返しだからである。