経済保守陣営の本音 〜支持率の高いリーダーに不人気な企業減税を断行させる〜

 参院選から1カ月過ぎ、経済保守派のホンネが散見されるようになった。彼らは安倍自民党惨敗により『消費税を上げて、法人税を下げる』という見通しが消えてしまったことが悔しくて溜まらないのである。ドイツなど先進諸国が軒並み大衆課税&法人減税をセットにした税制改革を断行しているのを横目で見るにつけ、「なんで日本はそれができないんだ」と気を揉んでいるのである。
 ただ選挙中は不思議なことに税制改革は争点にもならず、こんな話は寝耳に水と思う人も多いであろう。自民党に期待する経済保守派も、ベタにこんな公約を出したら選挙に不利になると自覚して黙っていたのである。強いて言えば中川前幹事長の「上げ潮路線」の究極のゴールがこれなのだが、オブラートに包んで敢えてわかりにくくしていたのである。
 ようは自民党自民党応援団の財界や新古典派の学者やアナリストも、みな国民を騙そうとしたのである。もっとも8/28のエントリーのように、そもそも庶民に厳しく企業に甘い政治など古今東西支持される訳がなく、それを実行するために騙すか他の部分で圧倒的な支持を集めて、多少不人気な政策を妥協させるのである。ネオリベに傾倒した識者は、ドイツ国民が敢えて企業の競争力を上げようという政策を支持したかのようなことを言っているが、事実は異なり、他の部分で支持ができるので、多少の気に喰わない政策があっても許容したに過ぎない。
 小泉政治を思い出すとよい。彼は自分の政治には痛みがあるとはっきり言った上で、他の部分で大衆迎合的政治手法で支持を集め、痛みの部分を不問にした。これは保守政治の王道であると言ってもいい。保守政治の世界は、支持率を高め選挙で勝つのが目的ではなく、それだけでは評価されない。一旦高い支持率を獲得し、それを背景に支持率を犠牲にしても国民に不人気な政策も含めて実行して初めて評価されるのである。
 財界などの経済保守勢力は常に国民的支持を喚起できるリーダーの出現を願っている。その為にポピュリズムを駆使し、その為に必要なパブリシティ費用の工面は惜しまない。もちろん高い支持率を背景に国民に不人気な「企業減税」を断行してもらいたいと願っているのである。
 安倍内閣発足時の捏造された“安倍人気”はまさに財界の野望そのものだ。その夢の楼閣はこんなに短期に崩壊してしまった。不人気な内閣というのは、国民受けを狙い、財界には都合の悪い政策を出してくる可能性があり、却って迷惑なので、存続を支持する価値がないのである。
 逆説的に言えば、支持率の低い内閣が続くことが、国民にとってはプラスの可能性がある。

抜本税制改革、従来方針でいけるか簡単に言えない=自民税調会長 8/24ロイター

付加価値税を上げる一方で法人税を引き下げたドイツの事例は「注目すべき」だとし、「理になかっている」と評価。「消費税は国際競争力の阻害要因にはならない。一方、法人税は国際競争力に響く」として、「消費税を悪」としがちな風潮に対し、消費税を上げる一方で法人税を引き下げることが国際的な流れになっていることも示していきたいと語った。
http://jp.reuters.com/article/businessNews/idJPJAPAN-27550720070824

改造内閣…税制改革で“思考停止”法人税引き下げ絶望 8/28フジサンケイビジネスアイ

参院での過半数割れの現状では、経済財政政策の停滞は避けられない。特に、今秋から予定していた消費税率の引き上げを含む抜本的な税制改革では、完全な“思考停止”に陥っている。 税制改正論議の封印により財政再建や年金改革に加え、経済界が要望し、世界的な引き下げ競争が激化している法人税の改革も暗礁に乗り上げるのは必至だ

http://www.business-i.jp/news/sou-page/news/200708280030a.nwc

ドイツのメルケル大連立に学ぶこと 8/30日経社説

 財政立て直しへ間接税の付加価値税率を今年から3%引き上げたが、08年に法人税負担を9%近く下げて企業活力に配慮する。実質経済成長率は昨年2.9%、増税実施の今年も2.3%の見通し。失業者も着実に減っている。11年には新規借金をゼロにできる見込みで財政、経済成長、雇用が並んで改善した。まさに日本が目指す姿だ。
http://www.nikkei.co.jp/news/shasetsu/index20070829AS1K2900129082007.html