今さらテロとの戦いと言われても

 最近、与党の政治家の口から「テロとの戦い」という言葉が頻発するが、どうも違和感が拭えない。9.11の直後でさえ、国民の間で「テロとの戦いに参加せねば」というコミットメントは形成されておらず、与党政治家も国民にコミットを求めてこなかった。むしろ「アメリカに協力せねば」という現実的なロジックが幅を利かせていたと思う。
 この時、北朝鮮の軍事的脅威が国民の間である程度認識されており、朝鮮半島有事でアメリカの軍事力に期待する以上、対テロ戦争への協力は不可分というのが、何となしのコンセンサスであったような気がする。
 ところが、アメリカはさっさと北朝鮮と握手することに熱心で、拉致問題に拘る日本を邪魔にさえ思う昨今である。当時の何となしのコンセンサスの前提は崩壊している。
 こうなると、当時日本ではあまりヒートアップせず、当事国のアメリカでさえ冷えてきた「テロとの戦い」という言葉を今さら持ち出すのである。「何を今さら」という感じが拭えない。
 ただ、与党議員が冷め切ったピザを食えと言い、北朝鮮問題ではアメリカは日本の意向など構わずの状態なのに、インド洋上での給油活動を支持する世論が増えているのが不思議でならない。