道路特定財源に関して 〜与党案を無視すればよい〜

 次の国会での最大の懸案事項は道路特定財源とそれに付随する租税特措法の取り扱いである。これに関しては、与党案vs民主党案という図式では本質を見誤るので、マスコミや識者の論調を引用しながら考えたい。
 識者とりわけ小泉改革を支持していた論客の間からは、与党も民主党もダメだという意見が多くみられる。
 例えば、中途半端な道路公団改革を推進して失笑を買った猪瀬直樹は、暫定税率廃止を謳う民主党案と道路建設を今後も推進する与党案を両断している。

 また産経新聞論説副委員長の岩崎慶市は「遺憾ながら政府・与党の来年度税制改正案は暫定税率は維持したものの、一般財源化は完全に有名無実化した。悲しいことに、民主党案はこれに輪をかけてひどい。」と与党案を少しした後、暫定税率廃止を謳う民主党を徹底的に批判している。

 猪瀬氏や岩崎氏の立場は、暫定税率を維持したまま道路特定財源一般財源化し、財政再建を急ぐという財務省の考えに近いものだ。私はこの考えもあながち悪くないとは思っているが、二大政党制では世論が3分割した時に一つの意見が捨てられるという弊害があり、今回この立場の人たちが政治的に捨てられ、与党と民主党を両方批判するという言論になっている。
 ただ岩崎氏の「民主党案は与党案に輪をかけてひどい」というのは無意味なポジショントークだと思う。この場合、ひどいのはまだまだ必要な道路があると高度成長時代に作られた暫定税率を維持した上で一般財源化もほとんど拒否している与党案であり、私はこの件で現与党に政権担当能力なしと見做している。
 与党案を「議論する価値なし」と捨て去った上で、民主党が唱える暫定税率を廃止した上での一般財源化と、猪瀬氏や財務省の主張する暫定税率を維持した上での一般財源化の両者が対峙すれば、けっこういい議論が展開されたはずだ。
 暫定税率を維持したままの一般財源化は悪くはないといったが、いくつか問題がある。一番の問題は公共交通の発達していない地方ほどガソリンを多く消費し、多くの租税を納めているということである。まだこれが道路関連で使われるなら、所得の高い都市住民の税負担が軽く所得の低い地方住民の税負担が重くても納得してもらえるが、財政再建に利用されたらこんな理不尽なことはなく、地方住民が納得しないのもわかる。
 民主党が唱える暫定税率廃止も、消費税値上げまったなしと言われる状況でどうかという意見もある。環境重視派からはガソリンに重税を課して自動車利用を抑制すべしという意見もある。
 私は、暫定税率は一旦廃止し、新たな環境課税を創設すべきだと思う。その場合、地方住民のガソリンは生活必需品、都市住民のガソリンは嗜好品として税率に差を設けるべきだと思う。具体的には都市部は暫定税率分と同じ25円をそのまま課税し、地方は5円程度に抑えはどうか。