社会民主主義勢力内の分裂

 東洋経済の「北欧」特集が波紋を呼んでいる。左翼雑誌でなく経済誌福祉国家を肯定的に取り上げたことに驚いた方は多いだろう。なにしろ日本では90年代以降福祉国家社会民主主義は時代遅れのものとされ、そのような主義主張は息を潜めていたのだから。
 田中宏和氏のブログの『世に倦む日日 』ではこの現象を取り上げ、社民主義は時代遅れで、イギリス労働党のブレア主義のような第三の道を是とする神野直彦氏を印象操作と批判している。
http://critic3.exblog.jp/7940463/
 ただ社会民主主義が日本国内で支持が拡大し、大きな政治的流れになるとなるとかなり疑問である。一定の支持は回復する希望はあるが、高福祉高負担を受け入れる土壌は日本にはないと思う。
 現実的には社会民主主義は他の潮流と部分共闘しながら、理想の一部を実現するしかない。ただ社会民主主義者の中にも、都市部と地方で断絶が見られる。都市部の社民主義者は、55年体制下の社会党的スタンスに近く、公共工事を重視する自民党的予算を敵視し、それを減らし社会福祉を充実させることを希望する。一方、地方の社民主義者は地域間格差の税制を唱える国民新党古い自民党的な主張とは融和的で公共事業に理解がある。前者は「税金の無駄使い糾弾」という立場では新自由主義とは共通利害。*1があり、後者はむしろ旧保守と共闘して新自由主義を敵視する
 このように社民主義も新旧あるいは都市と地方の対立を感じる。基本的に民主党左派や社民党などは前者のスタンスに近く「増税はまかりならん」の立場だが、最近消費税増税容認で物議を沸かしている北海道大学山口二郎教授は後者の立場を明確にしている。

税制論議への注文

 増税を論じる前に徹底して歳出削減をせよという一見もっともな正論には、私は反対である。地方交付税や公共事業費など、赤字減らしに即効性のある大口の歳出削減は、すでに十分進んでいる。これ以上やれば、非大都市圏の地方自治体の財政や地域経済は、疲弊を通り越して、破滅する。
http://www.yamaguchijiro.com/?eid=628

*1:都市部の社会党支持者の多くが意外とすんなり新進党支持者に移行したケースが多いのは、この「共通利害」が蝶番の役割を果たしたからだ。民主党内の新自由主義者社民主義者の融和に貢献しているのもこの蝶番である。