純化の政府与党案と集約妥協型の民主党案

 今回政府与党はかなり純度の高い路線を取った。自民党というのは、かなり広い層の意見を集約して玉虫色の落しどころをみつけるのが巧い政党で、そのようにして政権を維持してきたのだが、今回は他の意見をほとんど取り入れずに道路特定財源維持に純化したのは驚いた。小泉-安倍時代にあれだけ一般財源化を叫んでいた連中はどこに消えてしまったのだろうか?
 民主党自民党以上に雑多な人種の混成部隊な上、様々な民意を汲み取ろうとして実に玉虫色の対案を出してきた。暫定税率廃止派は一般財源化に強固に反対する人が、暫定税率廃止を担保に本則分の一般財源化は妥協してもらう。一般財源化論者には、本則分の一般財源化を担保に、暫定部分の廃止を妥協してもらう。環境派には暫定税率を引き下げた後に環境税を創設することを担保して、暫定税率廃止を妥協してもらう。更には道路を作ってほしいという人には、一般財源化した部分を地方交付税として、その中で地方自治体の判断で必要な道路は作れるとして納得してもらおうとした。
 この八方美人振りが仇ににもなる。一般財源論者には暫定税率廃止を「こんな財政が苦しいときに」と批判され、環境派には「ガソリン税廃止は自動車利用を誘発する」と批判され、道路族には財源不足を突かれる。暫定税率廃止派は今のところ満足しているようだが、民主党の大綱に環境税創設が書かれていると知らない人が多いから、後から増税の話が出たら「騙された」とのブーイングを喰らうであろう。
 結果的に政府与党案は、一部の人の満足度が高いが、その層が非常に狭くなった。一方民主党案は、比較的多くの人に政府与党案よりマシではとの印象を与えるが、どの立場の人からも少しづつ不満が残る。はっきり言って最策としてパンチがない。玉虫色をやめて特定の意見に集約した方が敵は若干増えるが政策にパンチが効いて盛り上がるという意見もある。どちらがいいかは政治センスの問題だ。最近国民運動レベルでは「ガソリン値下げ」に特化し、一般財源化と環境税創設はあまりアピールしない作戦に出ている。