「巨泉のこんなモノいらない!?」を覚えているか?

 1987年から89年にかけて日本テレビ系で放送されていた番組を覚えているだろうか?この番組で取り上げられるいらないものは「オリンピック」や「NHK」など多彩であったが、公共事業を取り上げることが多かった。
 この番組は、大衆に「無駄な公共事業」の存在を知らしめることに成功し、政治的にも大きな影響を与えた。元々公共事業批判は自民党土建政治を批判するサヨクのロジックで、この番組の企画自体も筑紫哲也朝日ジャーナルでやっていた企画がベースになっている。巨泉自身も暗に土建政治を覆したい思いがあったが、スポンサーや局の政治的立場でなかなかテレビでは難しい企画を、彼のテレビマン的センスでうまく番組にしたのである。
 ただ政治的な空気の変化を上手く利用したのはサヨクでなく、新自由主義的な政治勢力であった。「小さな政府」というスローガンは、税金の無駄遣いに憤りを覚えた有権者には魅力的なメッセージであった。これまで社会党等に投票していた都市部のリベラル層がごく自然に新進党などの新自由主義政党に流れた。そして小泉自民党新自由主義色を強めて「小さな政府」を唱えだすと、自民党に流れていった。
 新自由主義が斬り込みたい歳出の本丸は、土木でなく社会保障であったと気付くのは何十年も後のことになるのだが…。