財政タカ派のばらまき批判にはうんざり

 政府の総合経済対策に対しては、財政タカ派がばらまきとの声を高らかにする一方、この程度の経済政策は大海に墨汁を撒くようなもので効果がない。もっと大胆な経済対策が必要だとの声がある。
 政府の11兆円規模の総合経済対策というのは、そのほとんどの9兆円は中小企業向け融資。財政出動を伴う真水の部分は2兆円に過ぎない。実態は財政再建派の与謝野大臣が影響力を発揮し、かなり押さえ込んだものと言っていい。それでも財政タカ派のマスコミ人やエコノミストはこの2兆円すら許し難いようである。
 真水部分の中身を見ると、高齢者医療対策などに4000億円、省エネ・農林水産業対策・学校耐震などに9000億円、中小企業の資金繰り対策などに4000億円となっている。実態はとても景気対策には程遠いものだ。
 どうもマスコミ人というのは財政タカ派が多く、国民に不人気な増税を敢えて口にする政治家に異常までのシンパシーを抱いたり、かなりおかしな人たちが多い。特に与党や官庁のキャプを経験して論説委員クラスにいるマスコミエリートはそうだ。全国紙では実は読売新聞が一番「大きな政府」に親和的で、朝日から産経まで論説委員クラスは財政タカ派が多い。でも彼らの言っていることは本当によくわからない。例えば産経の経済担当の論説委員の岩崎慶市氏。

景気対策が政治の焦点になってきた。麻生新首相も総選挙にこれ一本で臨みそうだし、与党内では米金融危機の深刻化を理由にさらなる大型の対策を求める合唱も始まっている。いうまでもなく米金融危機と資源インフレの影響を楽観視することはできない。だが、この景気対策論には、ことさら危機を煽って民主党とのばらまき競争を正当化しようという臭がぷんぷんする。<中略> 震源地の米国はもちろん、銀行への公的資本注入に踏み切った英、仏など欧州に比べても、日本の傷は依然としてはるかに浅い。その欧州がどんな経済対策をとっているかをみると、日本の議論の異様さがもっとはっきりする。英は老人世帯向け冬季燃料手当の拡充に1133億円、家庭省エネ対策1970億円、社会的弱者のエネルギー料金引き下げ443億円が柱だ。仏は低所得者の暖房費補助引き上げ約210億円と漁業者支援546億円で、独は低所得者向け暖房費補助312億円のみである。<中略>
 日本よりはるかに景気が悪化している欧州が、景気対策ではなく社会政策にとどめている点だ。財政はといえば健全度は最劣等生日本とは比較にならないほどいい。それでも欧州は財政規律を緩めない。
 日本は11兆円規模の総合経済対策、うち補正予算で1・8兆円、今後の規模次第では赤字国債発行に追い込まれる定額減税だ。これでは欧州に感想の一つも聞いてみたくなる。少なくとも市場は改革の放棄と受け止めよう。
http://sankei.jp.msn.com/economy/finance/081006/fnc0810060831003-n1.htm



 真水の部分と総事業費を混乱させて、日本が酷い財政支出をしているような印象操作。日本の社会政策の予算規模は欧州のそれとどっこいどっこいだ。逆に岩崎は社会政策に限定した政策を評価しているのは面白い。学校だ農業だと理由をつけてどこか公共事業の予算をちゃっかり確保したり、弱者対策というより「企業を元気にしよう」という思想が強い政府案より民主党を始めとする野党や公明党の意見の方がより社会政策にウェイトを置いている。岩崎氏はこれまで子ども手当や農家や漁民への援助までばらまきだと批判してきたのではないか?
 まあ彼ばかり責めても仕方ない。私の周囲にも、社会政策でさえバラマキだと敵視する人が多い。それが都市部の世論の実態だ。