麻生政権が評価されない理由 ―積極財政派と財政再建派の野合政権―

 マスコミは総じて増税支持&財政再建至上主義だ。主張からすれば、税金の無駄遣いで財源を確保すると言っている民主党鳩山代表より、増税から逃げない麻生総理を支持してもいいはずだ。ただあの討論を聞いていて、さすがに麻生総理に軍配を上げるのはハイリスクな決断だと思うだろう。
 麻生政権の最大の問題は、麻生総理ら積極財政派と与謝野財務大臣財政再建派の野合政権であるという点である。小泉時代自民党構造改革派と財政再建派の連合政権で「歳出削減」を蝶番にして結束していたのが、麻生政権では「増税」を省番にして結束しているのである。
 財政再建派は歳出削減による財政再建路線を限界と理解し、消費税増税に強く反対する構造改革派を追い落とすために、小泉時代にずっと冷遇されてきた積極財政派と組んだのである。
 本来、財政再建派と積極財政派は水と油の関係なのだが、彼らは増税の成果を「借金返済」と「公共事業等への積極的支出」とで山分けすることによって野合したのだ。
 マスコミは読売新聞を除き、財政再建派>構造改革派>積極財政派の順に評価する。読売新聞だけは麻生総理らの積極財政施策を評価し、財政再建派>積極財政派>構造改革派の順に評価する。どんなに麻生総理がマスコミの悦ぶ消費税増税を唱えても、読売新聞以外のマスコミは積極財政に批判的なので、評価されないのである。
 財政再建派、構造改革派、積極財政派という分類は自民党の政策路線を色分けするにはわかりやすいが、民主党の政策も考慮すると分類しにくいので、ちょっと鳩山民主党の宣伝のようになってしまうが、歳出をヒトとコンクリートに分類するとわかりやすい。
 自民党の動きもこれでより明確になる。自民党内の財政再建派は、小泉時代構造改革と利害を一致させて、社会保障費も含む聖域なき財政再建を支持したが、07年の参院選の大敗を機に社会保障費の削減の限界を悟り、構造改革派と袂を分かち、消費税増税を明確にし、歳出のうち社会保障費の削減は諦める穏健な財政再建主義に転じた。更に消費税増税の実現のために、積極財政派と野合し、歳出削減路線自体を放棄して増税一本に絞るに至るのである。
 マスコミがどんなに財政再建主義に親和的だと言っても、ここまで魂を抜かれた財政再建主義など評価できないというのがスジだろう。一方民主党は消費税アップを明言しないという一点で常にマスコミの批判にさらされてきたが、社会保障は充実、公共事業は削減という路線は穏健な財政再建主義と近く、この部分では親和的な勢力が多い。また社会保障費等を聖域にするか否か以外では構造改革派ともそれ程遠くない。穏健な財政再建派である朝日、毎日や構造改革派の日経にしても、積極財政派の麻生内閣よりまだ民主党の路線の方が親和性がある。構造改革派の橋下大阪知事が民主党に近づくのも一理あって、構造改革派にとっては麻生政権の積極財政路線と親和性は全くなく、まだ民主党の政策の方が近いからだ。

税収
(増税)
歳出
(コンクリート)
歳出(人)
積極財政 読売
ステレオタイプ自民党*1
財政再建(穏健) 朝日、毎日
財政再建(強硬)
構造改革 -*2 日経
民主党 -

*1:55年体制下での自民党のイメージ。あくまでも野党が自民党を批判する時の自民等像であり、実際にこのような政策を行っていたとは限らない

*2:本来は規制緩和による経済活性化により税収を増やすという主張だが、不況下で税収増が望めない現況なので割愛