年功序列を批判しながら、子育て支援も批判する悪魔。

 ネオリベの匂いムンムンの外資系金融機関勤務の御仁。「日本の終身雇用と年功序列の硬直しきった雇用慣行が日本の経済成長を阻んでいると思っています。」ですか。別に今の政権は終身雇用や年功序列を守れなんて一言も言ってないと思うが。確かに正社員のクビを切りやすくする法改正は絶対にしないと思うが、そもそも終身雇用も年功序列も既に崩壊している。

 日本は子育てや教育に関する政府の拠出が先進国の中でも際立って低かった。子育ての始まる30代から、子どもの教育費が増大する40代から50代にかけての社会コストが必然的に高くなるのである。この社会コストを支えてきたのが年功序列賃金である。
 企業は例え能力が高くても、社会コストの低い20代の若者の賃金を抑制し、社会コストの高い年齢層に配分してきた。つまり企業が政府に代って再配分機能を担ってきたのである。
 政府も企業も社会コストのリスクを負わないとなると、いったいどうなるのか? 年功序列賃金が見直され、能力が高ければ若い時から高額の年収を手にいれられると仮定すれば、独身時に蓄財し理財し、将来結婚して子どもが出来た時のコスト増に備えるという計算もできるが、それが可能な人がどれだけの割合で存在しようか?
 この池田信夫のように終身雇用・年功序列を批判しながら、子ども手当てや高校の授業料の無償化をも批判している人たちは、この国をいったいどうしようと考えているのか? 日本人を殺して絶滅させようと考えていると穿ってしまう。
 今後、賃金のフラット化は避けられないであろう。特に熟練度が求められる職業を除き、年功的要素はなくなり、能力や職種による付加価値に応じた賃金になってゆくのは避けられない。連合なども同一賃金同一労働を基本とするとしているが、これを認めることは同じ仕事をしていれば年齢に関係なく同一賃金となることを認めることでもある。
 そのような環境でも我々が生きていけるようにするには、子育てに関する社会コストの低減は絶対条件である。私は年功序列賃金を批判するのは許されるが、子育てに関して社会コストを低減させるあらゆる施策を社会主義だと批判する人たちは相当質悪だと考える。