都市に予算を集中させろという見えないコンセンサス

 鳩山総理は施政方針演説で、「政治は弱者のためにある。弱い立場の人々の視点が尊重されなければならない」と言った。しかしそう思っていない人も多い。財界やエコノミストなどがよく口にする「成長戦略」と言う言葉は、つまり伸びる部分を政治がもっとバックアップするという意味である。強くなろうとするものをより強くしようという考え方だ。
 社会的強者と弱者という垂直軸で見ると、一見自民党は強くなろうとするものをより強くしようという考え方で、鳩山民主党は弱者のための政治を実践するように聞こえる。
 一方で、水平軸で見ると自民党政治は中央の富を弱い地方経済へ分配するに拘っていたのを、民主党政権は否定しようとしているようにも見える。
空港問題にしても、前原国交相は羽田や成田で高い発着料を負荷し、それ財源で地方空港を増産した自民党政権を強く批判した。これも中央の富を地方に配分する自民党的スタイルだが、多くのマスコミや世論はこの批判に賛同し、空港特会を廃止し地方の赤字空港の建設を止め、羽田空港の発着料を引き下げて国際競争力の高いハブ空港にすることに賛意を表明する。
同じお金を投資するなら、地方より都市部に投資した方がリターンが大きいに決まっている。成長戦略を重視するという姿勢は、つまり地方への投資はほどほどにして都市部に投資を集中するという意味も持つ。
財界やエコノミストといった社会保障を敵視し強者のための政治の実践を求める勢力が、都市に予算を集中し国際競争力を高めようとする民主党政権の方向性には拍手喝采を送ると言う皮肉な姿がここに垣間見れる。
もちろん衰退しより貧しくなる地方を民主党政権社会保障によって救おうとするだろうが、財界やエコノミストは放置して過疎化させて人口を都市部に集中化させて効率のいい国家を目指すという思惑があるというところでは考え方に硬軟はあるだろうが。